2016 年 21 巻 1 号 p. 37-43
医療行為等から得られる電子化された医療情報はあくまで副産物であり,これを活用しなければならないという義務が特にあるわけでない.それどころか個人情報の保護などクリアしなければならない重要な課題もある.それでも我々製薬企業が活用しなければならない事由があり,それがファーマコビジランス(医薬品の安全性監視,PV)への活用である.只今は「欧米では医療情報を二次利用できるので見つけることができる」類の副作用リスクの一部が国内では見つけることができない状態にある.こうしたラグの解消には制度設計の更新が不可欠であり,特にリスク管理計画 (Risk Management Plan, RMP) の中で用いる医療情報については,無条件に何でも使ってよいという訳にはいかず,その品質管理レベルが定義されている必要がある.ここでは,情報を二次利用することの本質や産業界一般におけるリアル・ワールド・データ・サイエンスとしての活用の中での品質レベルと,公的な利用における品質レベルの対比,また「品質」という言葉の曖昧さについても触れながら,製薬企業における医療情報活用のあり方,品質管理レベルという課題を整理してみたい.