薬剤疫学
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PMDA 医薬品有害事象報告データベースを用いた総合感冒剤有害事象の集団的背景の研究 ―潜在クラス分析を使った発症症例の分類―
神谷 昌子渡辺 美智子山内 慶太
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2018 年 23 巻 2 号 p. 75-87

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抄録

目的:日本の公開医薬品副作用データベースの活用として,PMDA の医薬品副作用データベース(JADER)を使って,総合感冒剤(一般薬)の服用により有害事象を発生した症例の集団的背景とその特性を統計的分析により明らかにすることを本研究の目的とする.

方法:2004 年 4 月から 2015 年 6 月までに報告された対象症例 990 例について潜在クラス分析を実施する.対象集団は複数のクラスに分類され,それぞれの集団の特性を明示する.さらに,有害事象の報告件数と薬剤別の有害事象報告件数をクラス別に集計して各々の特化係数を算出し,高い数値を示すクラスの背景と有害事象との関係性を調べる.また,同じデータでシグナル検出を実施し,特化係数から得られた結果との関連性について検討する.

結果:潜在クラス分析を行った結果,集団は 3 つのクラスに分けられた.クラス 1 は全体の 53.7%を占める原疾患や服用薬を持たない人々の集まりであり, ⌈ 健康群⌋とした.このクラスに特化した有害事象はアナフィラキシー反応などの免疫系疾患であった.クラス2 は全体の 33.2%を占める自己治療に積極的な集団であり, ⌈ 自己治療志向群⌋とした.特化した有害事象は重篤な皮膚障害であった.クラス 3 は全体の 13.1%で,クラス内の 90%が 60 歳以上であり,ほぼ全員が原疾患を持ち医療用薬を服用しているため ⌈ 高年齢通院治療群⌋とした.主な有害事象は間質性肺疾患と神経系障害であった.シグナル検出でシグナルが検出された特定薬剤は,その薬剤の有害事象が最も特化して発生しているクラスに属しており,その集団の特性を特定有害事象発生の背景要因として関連付けることができた.

結論:医薬品有害事象報告データベースに潜在クラス分析を適用することで,有害事象の発生とその集団的背景の関係性を明らかにすることができた.本研究は,総合感冒剤以外の医薬品についても応用が可能であり,JADER の新たな活用方法として寄与することが期待される.

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© 2018 日本薬剤疫学会
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