薬剤疫学
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特別企画/様々な立場からみたCOVID-19
2.社会福祉政策の視点から見た COVID-19 への対応
和田 一郎
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2021 年 26 巻 1 号 p. 63-70

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抄録

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は,社会の様々な領域に多大な影響を及ぼしている.わが国の政策の特徴を社会福祉や政策科学で活用されるアナロジー(analogy)の視点をもとに検討した.その結果,わが国の統計は実態を表していない,世界基準の政策対応ができない,現場の過酷な負担によりシステムが維持されている,地方自治体が国の政策と異なる方向性が取れる,非専門家が社会を混乱させる,集中投資や支援ができずに結果として他の分野に影響を及ぼすことが明らかになった.これを今回のCOVID-19 対応に適応すると,統計の課題,世界標準の政策対応ができない,政策の目的と手段が混乱する,人の命を軽視する世論誘導の増加,リソース不足により最適な対策が取れず悪化し他の分野に影響を及ぼすなどの課題となった.よって COVID-19 による社会への影響の被害にあった個人へのケアや補償が十分実施されず経済や社会の回復が遅れることが推測された.今後の対応として,一定レベル以上の感染症は災害として対応する,危機管理組織の設立と経験の蓄積,適切な統計情報の運用について提示し,危機になってからではなく普段からの準備を行い被害にあった方々の発見や支援等のシステムも併せて検討すべきと提言した.これらはすべて政治によって解決できるものである.つまりわが国の課題はすべて政治に集約できるため,政治による適切な政策が実行されない限り,現状の国民に過度に負担がかかる社会は長期的に続くと予測した.

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