薬剤疫学
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企画 / COVID-19 ワクチンの安全性モニタリングの実際
2 .大規模コホート調査の実際
伊藤 澄信
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2022 年 27 巻 2 号 p. 71-77

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抄録

わが国の新型コロナワクチン臨時接種に係る安全性情報などを厚生労働省の審議会で迅速に公開することを目的として,行政推進調査事業として「新型コロナワクチンの接種開始初期の重点的調査(コホート調査)」が計画され,2021年2月からファイザー社コミナティ筋注,モデルナ社スパイクバックス筋注およびアストラゼネカ社バキスゼブリア筋注の初回シリーズについて実施された.人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に適合した観察研究として迅速に実施するために,コマーシャル IRB の利用,実績のあるEDCを含む研究プラットフォームの準備,体温計などの資材管理を含んだマネージメント業務体制の構築,実施医療機関の管理をお願いした国立病院機構,地域医療機能推進機構,労働者健康安全機構病院各本部の協力が重要であった.その結果,9日間で約2万人の医療従事者を接種し,接種直後の安全性情報を3 月に公開した.2021年5月からモデルナ社(自衛隊職員対象),2021年8月からはアストラゼネカ社(一般人)の初回シリーズについての調査を実施した.さらに2021年12月からは3回目追加接種,2022年3月からは5~11歳の小児用ワクチン,2022年5月からは武田/ノババックス社ワクチンの調査および4 回目追加接種については安全性調査に加え,対象者の一部で抗体価の推移を検討し,副反応検討部会/安全対策調査会に23回(2022年7月8日現在)にわたって報告した.本調査結果は発熱,局所疼痛,倦怠感,頭痛などの特定有害事象に加えて,MedDRA コード化した自由記載欄,病休数,副反応使用薬剤数,抗体価推移および,PMDA 報告も含めた重篤な有害事象についても捕捉した医薬品安全性データベースとなっている.

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© 2022 日本薬剤疫学会
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