薬剤疫学
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企画 / COVID-19 ワクチンの安全性モニタリングの実際
3 . COVID-19 Vaccine(ChAdOx1-S [recombinant])(バキスゼブリアTM筋注)での安全対策の経験 ―市販直後調査を中心に―
下尾 雅子加藤 博子時本 敏充
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2022 年 27 巻 2 号 p. 79-87

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抄録

新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)の急激な世界的拡大により,本邦においても2020年4月に緊急事態宣言が発出され,社会生活に大きな影響を与えた.このような状況の中,コロナウイルス(SARS‒CoV‒2)ワクチン(遺伝子組換えサルアデノウイルスベクター)(バキスゼブリアTM筋注)はCOVID‒19 予防を目的にオックスフォード大学が開発を開始し,その後アストラゼネカ社が開発を受け継いだワクチンであり,2020年12月に英国で承認された.本邦においては2021年2月に製造販売承認申請を行い,同年5月に18歳以上を対象とする「SARS-CoV-2 による感染症の予防」を効能又は効果として特例承認を取得した.製造販売後の安全監視活動としては,市販直後調査,新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業である「新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査(コホート調査)」に引き続き実施される一般使用成績調査,特定の背景を有する被接種者を対象とした特定使用成績調査,定期的な国内外での市販後安全性情報の収集と当局報告および情報提供などが挙げられる.本寄稿ではコロナ禍の環境で実施した初の試みであるデジタル技術を活用した市販直後調査を中心に述べることとする.コロナ禍という状況において,従来の医薬情報担当者を介した市販直後調査を実施することは,日々の診療の中で感染対策の対応に逼迫している医療現場での負担となるばかりか,医療従事者への新たな感染契機となる可能性が懸念された.そのため,本市販直後調査は,承認前から規制当局と協議を行い,ワクチン接種円滑化システム(V‒SYS)と連携して,デジタルを活用して実施することで,医療従事者との密な接触を避ける運用とした.

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© 2022 日本薬剤疫学会
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