薬剤疫学
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企画 / COVID-19 ワクチンの安全性モニタリングの実際
4 . COVID-19 状況下における新型コロナウイルスワクチンの市販直後調査・使用成績調査の実際
中道 博之池田 好功
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2022 年 27 巻 2 号 p. 89-95

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抄録

新型コロナウイルス(SARS‒CoV‒2)の世界的な流行はさまざまな面で社会に大きな影響を与えた.新型コロナウイルスワクチンはこれらの状況を変えうる公衆衛生上の重要なツールとして開発され,2021年早期には日本においても承認され使用可能となった.開発から承認までもさまざまな困難があり,それを関連するステークホルダーが協力してのりこえてきたことは周知の事実である.開発に比べてあまり知られていないかもしれないが,承認後においても今までの医薬品とは多くの点で状況が異なっており,さまざまなチャレンジがあった.医療機関等の訪問は人流抑制の観点からもかなり制限をされていた.ワクチン接種が急務であったため承認から流通・使用までの期間が極めて短かった.ワクチンの配分については全体最適のために一元的なコントロールが必要であり,国が管理し,接種についても優先順位に基づいて実施された.接種機会を増やすため,大規模接種会場や職域接種会場など,いわゆる通常診療を行っているような医療機関とは異なる臨時の接種会場などで接種が実施された.このような状況下,薬機法をはじめとしたルールに従って,市販直後調査や安全性モニタリングのための副反応情報を収集するために企業側もさまざまな工夫を行ってきた.人流抑制下における迅速な情報提供や情報収集のためインターネットが活用された.職域接種を中心に使われることになった都合,当初想定していた医療機関との契約が難しい状況となり,製造販売後調査に関しては,調査方法を大幅に見直し,データベースを利用した調査への切り替えを行った.本稿ではCOVID‒19 状況下において企業がどのような対応をしてきたのか,市販直後調査・安全性モニタリング及び製造販売後調査を中心に報告したい.この報告が今後同様の状況が発生した際の対応を検討するうえでの一助になれば幸いである.

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© 2022 日本薬剤疫学会
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