薬剤疫学
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企画/リアルワールドエビデンス研究の再現性向上に向けた調和プロトコルテンプレート(HARPER)
治療効果に関する仮説を評価するリアルワールドエビデンス研究の再現性向上に向けた調和プロトコルテンプレート(HARPER日本語版):ISPE/ISPOR 合同タスクフォースの実施基準に関する報告(邦訳)
深澤 俊貴岩上 将夫原 梓野中 孝浩漆原 尚巳
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電子付録

2023 年 28 巻 1 号 p. 17-35

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抄録

問題: 研究の重要な各種設定項目(パラメータ)の不明瞭なコミュニケーションは,医療上の意思決定におけるリアルワールドエビデンス(real-world evidence:RWE)研究の有用性を制限することにつながる.データの起源,研究デザイン,解析とその実施についての明確なコミュニケーションが必要である.これにより,同一データによる再現や別データによる再現,潜在的なバイアス源の評価が促進される.

我々が行ったこと:国際薬剤疫学会(International Society for Pharmacoepidemiology: ISPE)と国際医薬経済・アウトカム研究学会(The Professional Society for Health Economics and Outcomes Research: ISPOR)は,主要な国際的ステークホルダーの代表を含む合同タスクフォースを招集し,治療効果を評価し意思決定に資することを目的としたRWE 研究のための調和プロトコルテンプレートを作成した.このテンプレートは,透明性を向上させるこれまでの取り組みに基づき構成され,RWE 研究を再現可能にするためにどの程度の詳細さが必要とされるかについての最近の知見を取り入れた.3 つの主要な目標を達成するために,データ,デザイン,解析,実施に関し十分な透明性を確保することが包括的な理念とされた.第一の目標は,研究者が因果的な問い(例:目的とするエスティマンド)を定義するために重要な研究の各種設定項目の選択とその根拠を,十分に議論し,かつ説明できるよう支援すること,第二の目標は,レビュアーがこれらの選択に関連するバイアスの可能性を容易に評価できるようにし,意思決定を促進すること,第三の目標は,再現性の向上である.

普及と利用促進のための戦略: この調和テンプレートの影響力は,その普及にかかっていることを認識し,今後2年間で主要な国際的ステークホルダーと共にテンプレートを導入し,試験的に使用する計画の概要を示した.

結論: HARmonized Protocol Template to Enhance Reproducibility(HARPER)は,共通のテキストや表,視覚に訴える構成を用いることにより,科学的な意思決定の意図について共通認識を生み出すのに役立つ.このテンプレートは,明確で再現性のあるRWE 研究のプロトコルのための一連の主要な推奨事項を示し,研究プロトコルの作成から登録,実施と実施手法の決定に関する報告に至るまで,研究プロセス全体を支える枠組みとして利用されることを意図している.

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© 2023 日本薬剤疫学会
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