薬剤疫学
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28 巻, 1 号
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原著
  • 駒嶺 真希, 長谷川 知章, 安藤 孝, 宇山 佳明
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 28 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/08/02
    [早期公開] 公開日: 2022/11/10
    ジャーナル フリー
    電子付録

    目的: MID-NET®はこれまでにさまざまな薬剤疫学的な解析を通じて市販後の医薬品安全性評価に貢献している.適切な活用を促進する一助とするため,MID-NET®の特徴把握のための二つの調査を実施した.本稿では,これらの調査結果を述べ,今後の調査における留意点等を考察する.

    調査デザイン: 医療情報データベースの二次利用によるコホート調査

    方法: 一つ目の調査では,検体検査の結果値の特徴を把握し,肝機能障害のリスク評価法を検討するため,肺高血圧症治療薬処方後の肝機能障害の発現状況を全例調査の結果と比較考察した.また,二つ目の調査では,関連薬剤の処方選択や切替え時の特徴を把握するため,先行バイオ医薬品とバイオ後続品(以下「BS」という)の処方実態について検討した.

    結果: 肝機能障害のリスク評価法の検討において,肺動脈性肺高血圧症治療薬処方後の肝機能障害発現状況は,アウトカム定義として設定した重症度のグレードにより異なるものの,重症度を一定程度考慮した基準を用いることで,全例調査における副作用と同程度の発現状況を確認できる可能性が示唆され,各検査項目を組み合わせた定義など,異なる基準での結果と合わせて検討しその頑健性などを確認することで,適切な評価が可能になるものと考えられた.BS の処方実態の検討において,BS の処方は全体的に経時的に増加する傾向が認められたが,その程度は有効成分ごとに異なっていた.また,先行バイオ医薬品からBS またはBS から先行バイオ医薬品へ切替え処方が行われた症例,切替えることなく先行バイオ医薬品またはBS を継続的に処方された症例が一定程度確認され,その処方動向には年齢等により異なる傾向が認められたことから,今後の調査にあたっては,先行バイオ医薬品とBS の処方状況を考慮することが重要であることが示された.

    結論: これら二つの調査結果は,MID-NET®データの特性を理解するために有用であり,MID-NET®の利用可能性の検討促進に寄与するものと考えられた.

企画/リアルワールドエビデンス研究の再現性向上に向けた調和プロトコルテンプレート(HARPER)
  • 深澤 俊貴, 岩上 将夫, 原 梓, 野中 孝浩, 漆原 尚巳
    原稿種別: その他
    2023 年 28 巻 1 号 p. 13-16
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/08/02
    ジャーナル フリー
  • 深澤 俊貴, 岩上 将夫, 原 梓, 野中 孝浩, 漆原 尚巳
    原稿種別: 翻訳
    2023 年 28 巻 1 号 p. 17-35
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/08/02
    ジャーナル フリー
    電子付録

    問題: 研究の重要な各種設定項目(パラメータ)の不明瞭なコミュニケーションは,医療上の意思決定におけるリアルワールドエビデンス(real-world evidence:RWE)研究の有用性を制限することにつながる.データの起源,研究デザイン,解析とその実施についての明確なコミュニケーションが必要である.これにより,同一データによる再現や別データによる再現,潜在的なバイアス源の評価が促進される.

    我々が行ったこと:国際薬剤疫学会(International Society for Pharmacoepidemiology: ISPE)と国際医薬経済・アウトカム研究学会(The Professional Society for Health Economics and Outcomes Research: ISPOR)は,主要な国際的ステークホルダーの代表を含む合同タスクフォースを招集し,治療効果を評価し意思決定に資することを目的としたRWE 研究のための調和プロトコルテンプレートを作成した.このテンプレートは,透明性を向上させるこれまでの取り組みに基づき構成され,RWE 研究を再現可能にするためにどの程度の詳細さが必要とされるかについての最近の知見を取り入れた.3 つの主要な目標を達成するために,データ,デザイン,解析,実施に関し十分な透明性を確保することが包括的な理念とされた.第一の目標は,研究者が因果的な問い(例:目的とするエスティマンド)を定義するために重要な研究の各種設定項目の選択とその根拠を,十分に議論し,かつ説明できるよう支援すること,第二の目標は,レビュアーがこれらの選択に関連するバイアスの可能性を容易に評価できるようにし,意思決定を促進すること,第三の目標は,再現性の向上である.

    普及と利用促進のための戦略: この調和テンプレートの影響力は,その普及にかかっていることを認識し,今後2年間で主要な国際的ステークホルダーと共にテンプレートを導入し,試験的に使用する計画の概要を示した.

    結論: HARmonized Protocol Template to Enhance Reproducibility(HARPER)は,共通のテキストや表,視覚に訴える構成を用いることにより,科学的な意思決定の意図について共通認識を生み出すのに役立つ.このテンプレートは,明確で再現性のあるRWE 研究のプロトコルのための一連の主要な推奨事項を示し,研究プロトコルの作成から登録,実施と実施手法の決定に関する報告に至るまで,研究プロセス全体を支える枠組みとして利用されることを意図している.

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