抄録
Wiskott-Aldrich症候群の10カ月の男児に対して父親からT細胞除去法を用いた骨髄移植を行った後, EBウイルス (EBV) に関連したlymphoproliferative disorder (LPD) を発症した例を経験した.発熱・全身の表在リンパ節腫脹・腸管出血がみられ, IgGλ型のM蛋白を認めた.M蛋白は治療後一時消失したが, IgM λ型が後に出現した.リンパ節生検組織像および増殖リンパ球内のEBVの存在よりEBV-associatedLPDと診断した.治療として, gancyclovir (DHPG), antilymphocyte globulin (ALG), antithymocyte globulin (ATG) およびetoposide (VP-16) の投与を試み, それぞれ有効であった.さらに免疫不全状態の改善のために再移植をHLA一致の同胞から行ったが, 救命には至らず敗血症のため死亡した. T細胞除去法やATGを用いた骨髄移植では, EBVの日和見感染によりLPDを発症する頻度が通常の骨髄移植の場合より高い. LPDの治療は困難であり予後不良である.早期に発見・診断し, 免疫抑制療法の減量や免疫賦活療法, 場合によっては抗腫瘍療法が必要である.