日本小児血液学会雑誌
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小児血液疾患における脾臓摘出術の適応と役割
堀越 泰雄
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2003 年 17 巻 6 号 p. 461-472

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抄録
小児血液疾患の中では慢性特発性血小板減少性紫斑病 (chronic ITP) や遺伝性球状赤血球症 (HS), 自己免疫性溶血性貧血 (AIHA) は, 脾臓摘出術 (脾摘) のよい適応であり, まれに緊急で行われることもある.その他の先天性溶血性疾患や若年性骨髄単球性白血病 (JMML), hypersplenismなどでも行われる場合がある.Wiskott-Aldrich症候群 (WAS) やGaucher病など一部の疾患では, 造血幹細胞移植や遺伝子治療が行われるようになったことから, 脾摘が行われることは少なくなった.脾摘は長期にわたる薬物療法を行うよりもQOLの面ですぐれている.腹腔鏡を用いた手術は, 安全かつ低侵襲に行うことができて児の負担が少ない.脾摘後の感染症には注意が必要であるが, 適応年齢を5歳以上とすることと, 肺炎球菌ワクチンの接種, 抗生物質の予防投与および発熱時の対応で, 敗血症のリスクを減じることができる.今後, 脾摘の適正な適応時期を考えるためにはQOLを含めた再検討が必要で, わが国での対象慢性疾患や脾摘例のregistryを行うべきである.
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