日本小児血液学会雑誌
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血友病に合併した頭蓋内出血33症例の検討
佐藤 哲司酒井 道生宮地 良介白幡 聡
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2005 年 19 巻 6 号 p. 586-591

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抄録
最近20年間に北部九州血友病センターを受診した209例の血友病患者の後方視的調査で, 33例 (15.8%) に合計57回の頭蓋内出血 (以下, ICH) のエピソードが認められた.ICH発症時年齢の中央値は1歳で, 56%は2歳以下の発症であった.重症 (第VIII因子活性1%未満) 群と軽・中等症 (同1~25%) 群の間でICHの発症頻度に差を認めなかった.初回ICHに限ると重症群のほうに非外傷性ICHが多かった (p=0.043).出血部位は, 硬膜下がもっとも多く, ついで脳実質の順であった.8.7%では同時に複数の箇所にICHがみられた.予後は, 死亡例3例, 後遺症あり9例, 後遺症なし21例であった.後遺症を残した9例中7例は2歳未満に最初のICHを起こしていた.一方, もっとも頻度が高かった硬膜下単独出血で後遺症を残した例はなかった.ICHの再発が33例中15例 (45.5%) に認められ, その7割は2年以内の間隔で起こっていた.すぐれた血液凝固因子製剤の開発により止血治療が格段に進歩した現在でも, なおICHは多発している.しかも, 一度ICHを経験した半数近くがICHを再発しており, ICH既往のあるケースはとくに注意深くフォローアップすべきであろう.
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