本研究では,就実大学薬学部が開講する薬学海外研修の教育的効果を明らかにするため,2023年度オーストラリアのアデレード大学で実施したプログラムを対象に,参加学生にアンケート調査および英語力確認テストを実施した.研修後の総合満足度は平均8.9点(10点満点中)と高く,英語学修に対する意欲や自己肯定感の向上が認められた.英語4技能テストではすべての技能で得点率が上昇し,特にリスニングとスピーキングにおいて顕著な伸びを示した.英会話時間の長い学生ほど,研修前後におけるスピーキング得点の増加率が高い数値となった学生が多かった.また,「行動力・チャレンジ精神」「異文化理解」などの自己成長に関する記述が多かった.このことは,本研修が英語力向上のみならず,薬学教育モデル・コア・カリキュラムの目指す人材育成とも一致し,学修意欲や将来展望の形成にも寄与していることが示唆された.
The educational impact of an overseas training program offered by the School of Pharmacy at Shujitsu University was evaluated during a 2023 visit to the University of Adelaide, Australia, with ten pharmacy students. Pre- and post-program surveys and English proficiency tests were administered to assess changes in attitudes and learning outcomes. The overall satisfaction score after the program averaged 8.9 out of 10, indicating high fulfillment. The participants showed increased motivation to learn English and improved self-confidence. Objective English proficiency tests showed improvements across all four language skills, particularly in listening and speaking. Students who spent more time in daily English conversations tended to show larger improvement in speaking scores. Qualitative responses indicated growth in having initiative, a willingness to take on challenges, and intercultural understanding. These findings suggested that the program not only enhanced language proficiency but also fostered communication skills, self-awareness, and professional motivation. This development of globally minded pharmacists was consistent with the objectives of the Model Core Curriculum for Pharmaceutical Education.
薬学部が6年制へ移行して以降,薬学教育モデル・コア・カリキュラム(以下,コアカリ)は,平成14年度版・15年度版の初期版を経て,平成25年度改訂版,令和4年度改訂版へと改訂が重ねられ,社会的ニーズに応じた教育内容の充実が図られてきた1–8).いずれのコアカリにおいても共通して,基礎薬学および臨床薬学の学修成果を実践に活かし,社会に貢献できる「コミュニケーション力をもった医療人材」の育成を目的としている.その基本理念として,医療人としての資質と能力を身につけ,社会変化に対応しつつ生涯にわたり研鑽できる人材の育成が掲げられている.一例として,平成25年度改訂版の「B 薬学と社会」には,「④地域における薬局の役割」に関連する学修項目として「1.諸外国における薬局の機能と業務について,日本と比較しながら説明できる」と明記されている3).また,令和4年度改訂版では,「A 薬剤師として求められる基本的な資質・能力」の中で「10.社会における医療の役割の理解」として,「地域社会から国際社会にわたる広い視野に立ち,未病・予防,治療,予後管理・看取りまで質の高い医療・福祉・公衆衛生を担う」ことを,生涯にわたり研鑽する姿勢が求められている4).
就実大学薬学部では,これらの趣旨を踏まえ,アドバンスト科目の一つとして「薬学海外研修」を開講している(Supplementary materials S1).本科目は「多角的視野をもち,国際社会で活躍できる薬剤師の育成」を目的に,平成22(2010)年度より実施しており,2025年度で16年目を迎える.開講当初は5・6年次生を対象としていたが,平成25年度改訂コアカリへの対応により,2019年度からは3~6年次生に対象を拡大した.2024年度を含め最少催行人数に達せず実施できなかった年が数回あり,さらに新型コロナウイルス感染症の影響により2020・2021年度は中止となった.この後,それまでの研修先であったオーストラリアのクイーンズランド大学は短期プログラムを廃止したため,岡山県と姉妹提携を結んでいる南オーストラリア州を通じて,2023年度からは研修先をアデレード大学へと変更する等,教育環境および社会情勢の変化に対応しながら,本学部の特徴ある教育科目として継続してきた9–12).また,本学内の倫理関連規程も整備されてきたので,アンケートをはじめとした研修評価を適切に実施するため,本学の教育・研究倫理安全委員会の承認も受けた.
16年という歩みの中で,本研修が参加学生にもたらす学修効果を明らかにし,より充実した研修内容となることを目指してアンケート項目の改善を図ってきた.2023年度の研修に用いたアンケートでは本研修に対しての期待と得られた成果についての項目を増設した.また,先行研究9–12) で実施できていなかった客観的評価を行うため,英語力確認テストを導入することで学修効果の定量的解析を試みた.さらに,本研修が単に英語力の向上に留まらず,今後の学修や将来に対する意識の変容等をもたらしているかを多面的に解析する可能性を追求して,自由記述に対する心理学的観点からのテキスト解析も新たに試みたので,今回の薬学海外研修について,事前説明会~事後アンケートの解析結果までの詳細を報告する.
オーストラリアの南に位置する南オーストラリア州の州都アデレードにおいて2週間(2023年8月5日(土)就実大学から出発,アデレード大学での研修8月7日(月)~8月18日(金),8月20日(日)大学へ帰着)の薬学海外研修を実施した.参加学生10名は,同大学のThe English Learning Centre(ELC)において,本学薬学生向けに特別に設計された10日間のSpecialized English Programを受講した(図1).

アデレード大学における研修日程表(a)と研修内容(時間)(b).a.の時間帯に示すカッコ内の数字は,b.で示す研修内容に対応している.b.(1)講義:薬学系英語や医療系英語を中心に英語四技能の向上を目的とした学修.(2)実習:製薬会社(BioCina社)の見学や企業(薬局)の経営者の講演により英語と海外の薬学業界に関する学修.(3)異文化交流:Cleland Wildlife Parkの見学や研修開始・終了時のセレモニー等の異文化体験.*空き時間は主にホストファミリーと過ごすことでオーストラリアの生活文化を学んだ.授業の復習や自主学修等にも活用した.
プログラムには,基礎英語および医療英語の授業に加え,現地薬局の見学,mRNAワクチン関連製薬企業BioCina社訪問,企業経営者による講演,Cleland Wildlife Park見学などの課外学修が含まれ,語学研修に留まらず,医療・産業・文化を多角的に学ぶ内容となっていた.学生は全員が個別にホームステイを行い,ホストファミリーとの交流を通じて日常英会話を実践し,生活文化を体験した.
2. 参加者就実大学薬学部3年次生6名,4年次生2名,5年次生2名(実務実習修了者)計10名(男性2名,女性8名)であった.引率教員2名が同行した.
3. アンケート調査本調査は就実大学教育・研究倫理安全委員会の承認を得て実施した(承認番号257).協力は任意とし,成績評価には一切影響しない旨を文書および口頭で説明した.説明会や事前に行ったアンケートは,主として研修への参加を募るために魅力ある研修となるように改善を図るための項目から成っている(例:〈海外研修に関する質問;説明会アンケート11.~15.,事前アンケート16.~17.〉).事後アンケートは,研修の改善を図るための項目(例:〈海外研修に関する質問 4.~15.〉)や学修効果を評価する項目(例:〈海外研修に関する質問 16.~21.〉,〈まとめの質問36.~37.〉),および将来の参加者が参考となる項目(例:〈生活などに関する質問〉)から成っている.学修効果を評価する質問では,〈海外研修に関する質問 8.〉のように項目の選択とそれを選んだ理由の記述とを組み合わせ,できるだけ適切な学修効果の把握ができるように試みた.また,事前・事後アンケートから得られる主観的評価と英語力確認試験から得られる客観的評価とを比較検討し,さらに共起ネットワークを作成して自由記述を深く解析することで,限られた例数ではあるが得られる学修成果をできるだけ引き出し,適切に評価できるように試みた.なお,質問項目は,過去の研修で蓄積した中から選別しながら用いているが,今回は本研修に対しての期待と得られた成果についての項目を増設した.いずれのアンケートも,10名全員から回答が得られた.
1) 事前調査2022年12月26日に開催した事前説明会においてアンケートを実施し(Supplementary materials S2),参加希望者十数名のうち最終的に参加を決定した10名の回答を解析対象とした.さらに,2023年5月16日に研修前説明会を実施し,同参加者を対象に追加アンケートを行った(Supplementary materials S3).調査項目は,研修への興味,参加動機,英語力の自己評価,期待・不安等であった.なお,5年生2名は実務実習中で出席できなかったため,メールを介しての実施となった.
2) 事後調査帰国後に,研修内容・生活環境・英語力向上に関するアンケートを実施した(Supplementary materials S4).自由記述も含めて集計・分析を行った.
4. 英語力確認テスト英語4技能(Reading[R],Writing[W],Listening[L],Speaking[S])について,研修前後で同一形式の確認テストを実施した.本テストは,文献13) において同一参加者集団の客観的英語力評価として用いたものと同一であり,本稿でもその結果を用いた.テストの概要として,R(37問)およびL(35問)は,公式TOEIC® Listening & Reading 問題集 4および5から抜粋した問題を使用した.Wは同書の題材を基に作成した2題から1題を選択させ,自由記述とした.Sは簡単な設問文に対する口頭解答とした.WおよびSの評価は,IELTSのBand Descriptorsを参考に作成した基準に基づき採点した.作問および評価は,著者の一人であり英語を母語とするBenjamin W. Listenが中心となって担当した.
5. 解析方法アンケート結果は選択肢回答を集計し,自由記述は内容ごとにカテゴリ化した.英語力確認テストについては,各分野の満点を100%として得点率およびその増加幅を算出して比較した.さらに,自由記述の回答は,得られた記述テキストの形態素解析を行い,語の頻度や共起の強い語から回答のパターンを探索するテキストマイニングを行った.形態素解析およびテキストマイニングにはKH Coder 3を利用した.事後アンケートの「成長できたこと」「将来像」の2問を分析の対象とし,共起ネットワークを作成した.偶然の影響を抑えるため,語の出現頻度に下限を設け,最小出現数2回を条件として語を抽出した.図示する共起関係は上位30を採用した.なお,データ数が少ないため,本分析は回答傾向を把握するための探索的分析として位置づけた.
本研究の全アンケートは,薬学海外研修参加者10名より全数回答を得た.
1. 説明会・事前アンケート多くの学生が参加したい・役に立つと思う研修を目指して,様々な項目の期待度とそれらの事後評価を調べた.研修内容に対する期待度は総じて高く,特に「研修先大学の授業」「自身の成長」「医療施設での実務見学」「課外アクティビティ」「医療施設での授業・セミナー」が高評価であった(図2a).自由記述からは,通常渡航では得難いオーストラリアの生活に溶け込むホームステイ等を「貴重な機会」と捉える記述が多くみられた(図2b).一方,「参加費」は最も低い評価であり,物価上昇や国際情勢に伴う費用増が負の要因として表出していた(図2a).参加への意思決定要因は上記の高期待項目に概ね重なるが,「大学主催で安心」という点も高く評価された.半数超が海外渡航未経験であったが,大学公式プログラムで引率教員2名が同行する点が参加への安心感に寄与したと推察される.渡航前の不安は主にホームステイに関するもので,ステイ先家族とのコミュニケーション,食事,生活環境が挙げられた.

海外研修の期待度と研修全体を通じた各項目の評価(5段階評価)(a)と自由記述(b).a.各項目の数値は,参加者の平均値を示す(n = 10).
研修全体の満足度は10点満点中平均8.9点と高値であった.各自が「自分の英語で会話する」「英語を好きになる」「英語を楽しむ」「ホストファミリーと会話する」等の自分なりに掲げた目標は,全員が概ね達成した.期待度と満足度の比較でも十分な充足が確認された(図2a).事前に高かったホームステイにおける不安は,事後の満足度の高さおよび自由記述から多くが杞憂であったと言える(図2b).学生対応に慣れたファミリーが多く,対応は非常に良かったと思われた.後輩へのアドバイスにも,「行って後悔することは一つもないから行くべき!一生忘れられない思い出になった」「行ったら確実に世界が広がります.かける費用分以上の価値は必ずあります」「深く考えず,少しでも興味があるなら行くことをお勧めする.この先経験することができないことを経験できると思う」という強い肯定的意見が述べられていた.研修期間全体を通じた各項目において特に評価が高かったのは,「研修先大学の授業」「プログラム内アクティビティ」「課外アクティビティ」「ホームステイ/宿泊・滞在先」「自由時間(週末,平日)」であった(図2).大学での授業を最もよかった項目として選んだ理由には,「講義にクイズが取り入れられていて楽しく学べた」「生徒が積極的に参加できる内容で充実していた」「質問しやすい環境で,授業内容についてだけでなくお勧めの場所を聞いたりできた」「アデレード大学の英語の先生が困ったことを丁寧に教えてくれたり,たくさん会話をしようとしてくれた」とあった.また,ホームステイを一番に選んだ理由には,「ホストマザーとよい関係を築くことができた」「ホストファミリーの協力もあり,スムーズに観光地を巡ったり友達と遊びに行くことができた」「一番英語力がついたと感じたのがホームステイであった」とあり,ホームステイが高く評価されていた.また,自由時間にはカフェに行ったり,バスや路面電車などの公共交通機関で少し遠い所に出かけたり,自分達なりの体験ができたことが充実感につながったようである.
一方,改善要望として「薬局・製薬企業での専門的内容の理解が難しい」「現地学生との交流機会が少ない」「ホストファミリーの英語が理解できない時は,少しつらかった」「他のホストファミリーと比較すると,シャワータイムや食事に不満があった」「ホストファミリーとの関係で,他のメンバーと一緒に遊びに行けなかった」等が示された.
学修成果に関連して,研修で身についた項目としては「行動力・チャレンジ精神」が最多で,次いで「異文化理解」であった.成長の自己評価では「コミュニケーション力が身についた」「自分の考えを述べることができるようになった」「プレゼンテーション力・発信力が身についた」「積極性が高まった」「行動力がつき,笑顔が増えた」「世界は広く様々な人がいて色々な考え方をもっているので,他者を理解しようとする姿勢が大切だとわかった」と記述され,9割の学生が正課学修への意欲向上を回答した.将来像は「卒後の海外留学」「国際的に働く」「英語に強い薬剤師」「他者・世界への関心拡大」など具体的であった.
3. 英語力確認テスト(客観的英語力)今回の研修における10名という限られた参加者での結果ではあるが,研修前後の総合点の変化では,多くの学生が研修後の方が高得点となっていた.比較を可能とするために,各技能の得点についてそれぞれの満点を100%とし,得点率(%)に換算して示した(図3a).得点の増加幅(平均値)はRで3.8%,Wで11.0%,Lで19.1%,Sで15.0%であり,LとSで顕著であった(図3a).

研修前後の変化の比較.a.英語力確認テスト結果の得点率,b.主観的評価(10段階評価),c.英語力確認テスト(客観的評価)と主観的評価の伸び率.a.,c.では,各項目の満点を100%として得点率を求めている.数値は参加者の平均値を示す(n = 10).
自己評価(10段階評価)は研修後に全員が同点以上となり,特にSでは全員が上昇した.L・S,コミュニケーション力,発信力の自己評価上昇が顕著であった(図3b).
5. 主観的・客観的英語力の伸び客観的評価および主観的評価の各項目について満点を100%として換算した得点の増加幅比較では,英語力確認テスト結果(客観的評価)よりも主観的評価の増加幅が相対的に大きかった(図3c).1日の英会話時間が最も長かった学生は,各々大学で200分,外出先で60分,ホームステイ先で180分を費やしていた(図4a).平均的には大学でのプログラムに沿った英会話の時間が長く,126分もの英会話の機会をもっていた.1日の英会話時間と研修前後の英語力確認テストのSの得点差(伸び)との関係を調べたところ,英会話時間の長い学生はSがよく伸びている傾向のあることが示唆された(図4b).

1日の英会話時間(a)と,1日の英会話時間とSpeakingテスト結果の関係(b).a.の数値はそれぞれ,参加者10名のうちの最小値,最大値,平均値を示す.b.の縦軸は各参加者のSpeakingの伸び(研修前後の得点差)を,横軸は各参加者の1日の英会話時間(分)を示す(n = 10).
事後アンケートの「今回の研修を通して成長できたことをできるだけ詳しく日本語で記入してください」および「このプログラムを終了した今,あなたが目指す,自分がこうなりたいという将来の姿はどのようなものですか?」に対する自由記述について,テキストに同時に出現する語句間の関係を可視化するためにKH Coderを用いて共起ネットワークを作成した(図5).

成長(a)と将来像(b)に関する自由記述の共起ネットワーク
成長に関する記述(図5a)からは,学生は海外研修を通して異文化理解と自己成長を実感していたと思われる.「文化」「理解」「世界」「ホームステイ」などの語が共起し,ホームステイを介した異文化交流が実践的な学びの機会となっていたことが伺えた(図5a-01).また,「自分」「伝える」といった語の共起からは,自己の考えを言語化し,他者に向けて発信しようとする意識の向上が示唆された(図5a-02).具体的には,「自分の気持ちや考えを英語で伝えようとするから発信力が向上した」と発信力に言及するものも含まれていた.さらに,「聞く」「リスニング」「積極的」や「スピーキング」「伸びる」「積極性」「出来る」といった語の共起からは,英語で話す際の成功体験が,学生の自信と積極性の向上に寄与していた可能性が示唆された(図5a-04, 05).「コミュニケーション」「お互い」「ホストファミリー」などの語からは,他者との相互理解を重視する姿勢も推察され(図5a-03),英語力だけでなく,対人関係や行動力の面でも成長を遂げた学生がいたことがわかった.
将来像に関する記述(図5b)からは,「世界」「自分」「見える」「興味」などの語が共起し,世界への関心と自己理解が同時に深まっていたことが示唆された(図5b-01).また,「行く」「留学」「海外」などの語が共起し,具体的な記述には「1年くらい留学に行って英語力をのばしたい」「ワーキングホリデーを使ってオーストラリアに戻りたい」「世界で仕事ができるような人になりたい」といった再び留学したいという意欲や国際志向の高まりに関する記述が含まれていた.「英語」「薬剤師」の共起からは,英語力と専門職を結びつけた将来像の形成が示唆され,具体的な記述からは「TOEIC800点を目指す」「薬剤師や,他職種の人と意見交流してチーム医療の一員となりたい」といった行動計画が含まれていた.
就実大学薬学部では,コアカリの趣旨を踏まえ,基盤的学修の成果を実践して社会に貢献できる「コミュニケーション力をもった医療人材」の育成を目指し,アドバンスト科目の一つとして薬学海外研修を開講してきた.本科目の開講以来十数年という歩みの中で改善を重ね,2023年度の薬学海外研修を実施した.参加者は3年生から5年生を含む10名であったが,客観的試験の結果において英語力の成長を促すことができたと言える.また,主観的な能力向上も認められており,本研修に参加した学生の自己評価および自由記述からは,「行動力・チャレンジ精神」や「異文化理解」に関する意識の変化が語られており,学生は自身の成長を感じる経験をもつことができた.そのことが自己肯定感や薬学部での正課への学修意欲の向上につながっていると推察され,本研修での成果が単に英語力の向上に留まらず,今後の薬学の学修や将来に対する姿勢にもよい効果を及ぼしていると考える.
さらに,本研修という異文化圏において母国語ではない言語でコミュニケーションを図るという経験を通じて,自己の内面を見つめると共に他者に向けて「伝えようとする力」が育まれ,結果として気持ちを通じ合えたという成功体験は,自信と前向きな姿勢に結びついたと考えられる.同時に,自分と世界,自分と学修との関係を見つめ直す視点も育まれ,さらにその延長として卒業後の将来像も考える契機となっている.すなわち,本研修は,英語力の向上に留まらず正課学修への意欲向上,将来像の具体化に寄与したと考える.
本研究の限界として,サンプルサイズが小さい,対照群を欠く,短期フォローである点が挙げられる.今後は,複数年度の縦断データ蓄積や統計的検定等の検討や改善を加え,将来にわたり貴重な経験となる本研修により多くの学生が参加してくれるよう取り組んでいく.
共著者の役割:浅井彰太(研修企画・解析と論文執筆),吉井圭佑(アンケートの実施と入力・論文執筆),阿蘓寛明(研修企画・引率とアンケート実施),林秀樹(解析と論文執筆),Listen W. Benjamin(英語力確認テスト実施と評価・入力),豊村隆男(研修企画と解析),後藤秀貴(解析と論文執筆),徳永智典(入力と解析),山西健斗(解析),加地弘明(研修企画),山﨑勤(アンケート実施),加藤久登(解析),角本幹夫(解析),吉川弥里(アンケート実施),小川和加野(解析),近藤雪絵(解析と論文執筆),洲崎悦子(論文執筆),山田陽一(研修企画と引率・統括).
本研究の遂行にあたり,就実大学国際交流センターの皆様,アデレード大学English Language Centreの皆様にご協力いただきました.
発表内容に関連し,開示すべき利益相反はない.
この論文のJ-STAGEオンラインジャーナル版に電子付録(Supplementary materials)を含んでいます.