2021 年 5 巻 論文ID: 2020-072
「障害者差別解消法」の施行により,高等教育機関においても,障がいを理由とする不当な差別的取扱いの禁止と合理的配慮の提供が求められるようになった.聴覚障がい学生支援においては,支援人材の不足のみならず,情報の等価性の担保の点でも課題が山積している.また,教育の本質を変えることなく合理的配慮を提供するには,テクニカル・スタンダードの策定が求められるところであるが,これが新たな欠格条項とならぬよう,具体的に専門職として要求されるパフォーマンスを場面ごとに可視化した上で建設的対話を行うことが求められる.医療従事者養成における聴覚障がい学生支援の体制整備を人権保障の義務的視点としてではなく,競争戦略,すなわちダイバーシティとして行うことで,障がいのない学生にとっても多様な患者に対応可能なソーシャルスキルを磨く経験となり,障がいという多様性に対する高いセンシティビティを身に着けることが期待できる.