2022 年 6 巻 論文ID: 2022-031
薬剤師としての倫理観は日々の学びや経験のなかで醸成され,薬学6年間及び卒後の実践を通して培われていくものである.東京薬科大学薬学部2年生の履修科目「ゼミナール」において,独自に製作した倫理ビデオ教材「残薬調整を嫌がる患者」「若年性認知症の家族への対応」「問診表とお薬手帳を活用しきれていないケース」を用い,薬剤師が日常業務のなかで直面する倫理的問題を題材にし,気づきを促すための講義を行った.臨床の場面を可視化したビデオ教材の活用により,学生は患者一人ひとりの状況や背景をより具体的に捉え,患者の価値観を受容するとともに,患者の自己決定を促すよう解決策を考えることができた.また,グループワークからは他者の意見を聞くことにより自分とは異なる多様な考えや視点があることに気づきを得た.本講義の試行は実践的な臨床倫理教育におけるアクティブ・ラーニングの導入モデルとしての有効性が示唆された.