薬学教育
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実践報告
ゼミナール「小児服薬指導」の教育効果:学生の自己評価と気づきの観点から
櫻井 浩子似内 雄太山根 孝太
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2024 年 8 巻 論文ID: 2024-005

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抄録

薬学教育モデル・コアカリキュラムには,小児等特別な配慮が必要な患者への服薬指導において適切な応対ができることが掲げられているが,実際は小児の特徴や服薬支援を学ぶ機会は限定的である.東京薬科大学薬学部2年生の履修科目「ゼミナール」のなかで,小児服薬指導についてスモールグループディスカッション(SGD)を用い講義を行った.自己評価シートの記載内容の結果,学生は薬剤師には子ども特有の薬の飲み方の違いを知り,子どもと保護者に対し飲み合わせ,服用方法などを説明する必要性などの気づきを得られたことがわかった.学生が作成したポスターには多くの工夫が見られ,子どもの目線に立ち,ひらがなや迷路などを用い服薬について患者本人である子ども自身が納得するインフォームド・アセントの重要性を学生が認識していたことが考えられる.講義は小児服薬指導に関する基本的知識,態度を習得する有用な機会であったことが示唆された.

Abstract

The Model Core Curriculum for Pharmacy Education states that a pharmacist should respond appropriately when providing medication guidance to children, pregnant and nursing women, older adults, and other patients requiring special considerations. Unfortunately, pharmacists have limited opportunities to learn about the characteristics of care for children and specific medication support. This lack of knowledge affects the ability to relate to children and their guardians in clinical settings. A seminar course for second-year pharmacy students at the Tokyo University of Pharmacy and Life Sciences included a lecture on medication guidance for pediatrics with small group discussions (SGD). The results of their self-evaluations revealed that the students knew the difference between adult and pediatric medicine administration and how to provide clear explanations. The students created posters showing the importance of informed assent and giving information children could understand, like hiragana and mazes, to improve medication adherence. The seminar was an essential opportunity for the students to gain more knowledge and develop new perspectives in pediatric counseling.

目的

現行の薬学教育モデル・コアカリキュラムでは,「妊婦・授乳婦,小児,高齢者等特別な配慮が必要な患者への服薬指導において,適切な応対ができる」ことが掲げられている.しかし,実際の薬学部のシラバスにおいて,特に小児の特徴や服薬支援について学ぶ機会は限られており,臨床現場で働く際に子どもや保護者へのかかわりに限界が生じる.このような状況を変えるために,例えば国立成育医療研究センター薬剤部では,新人薬剤師に対し小児領域におけるレジデント教育を提供し,本領域の薬物療法の適正化やその発展に貢献できる薬剤師の育成に力を注いでいる1).しかし,薬学教育における小児服薬指導の講義やその教育効果に関する先行研究は筆者らが知る限りあまりない.

そこで,東京薬科大学(以下本学)薬学部2年生の履修科目「ゼミナール」において,小児薬の特徴,小児服薬指導に関して薬剤師に求められている知識や工夫を習得するためにSGDを用いて講義を実施した.講義後に学生に気づきなどを記入してもらった.本稿では本講義の教育効果について報告する.

方法

1. ゼミナールの全体の概要

薬学生には,優れた医療人となるために必修科目で学ぶ基本的な知識と技能,さらには態度に加え,世の中を取り巻く様々な話題,課題,見解などについて豊富な知識を持ち,的確な見識を持って行動できるようになることが望まれる.本学2年生「ゼミナール」は少人数クラスで実施する選択必修科目であり,科目を自らの興味で選んで履修することで自主性を養い,演習,グループ討論,プレゼンテーションなどの能動的な学習方法を実践することで,優れた医療人となるための技能や態度を醸成することを目的としている.

筆者らが担当するゼミナール「薬剤師としてのコミュニケーション力向上を目指そう」(2021年度から2023年度まで)は「薬剤師が直面する倫理的問題について,みんなで考えてみよう」(2019年度開講)を引き継いだものである.2019年度および2021年度のゼミナールの一部分である倫理ビデオ教材を用いた回については,すでに報告した2).2022年度および2023年度の学習目標は,薬学教育モデル・コアカリキュラムにそって薬剤師が臨床現場で遭遇する「小児,高齢者等特別な配慮が必要な患者への服薬指導において,適切な応対ができる」こととした.困難事例やゲームを通して,どのような問題があり,薬剤師としてどのように対応したらよいか考察するためにSGDを用い仲間と議論をする機会を設けた.

ゼミナール全体の流れは,①1日目(2コマ):薬剤師の日常業務における倫理と法や調剤の流れを知り,患者対応の困難例についてSGDを実施.②2日目(3コマ):子どもの薬の特徴と服薬指導の配慮についてSGDを実施,グループワークとして薬局内掲示を想定したポスターの作成,③3日目(3コマ):避難所運営ゲームを体験し,避難所で被災者のためにどのようなかかわりができるのかSGDを実施,④4日目(2コマ):課題提示と発表準備,⑤5日目(3コマ):④で提示した課題について発表し,筆者らからフィードバックを行った.なお,2019年度および2021年度からの変更点は2日目の講義内容であり,本稿は2日目の3コマ(70分×3コマ)となる「子どもの薬の特徴と服薬指導の配慮についてSGDを実施」における教育効果について検討するものである.

ゼミナールの全体評価として,形成的評価の項目は,知識:薬局業務や災害時の避難所運営について知り,薬剤師ができることを調べる.技能:仲間の意見を聴き,自分の考えを深化できるように促す.態度:仲間への肯定的関心を表現することができる,である.総括的評価として,知識:SGDや発表での積極的なかかわり具合について評価する.技能:適切な情報収集及び発表資料の作成について総合的に評価する.態度:受講態度(SGDへの関与)により総合的に評価する,である.パフォーマンス評価の項目は,SGDにおける積極的な参加姿勢を評価する,課題で作成した成果物を評価する,である2)

2. 小児服薬指導に関する講義の概要

本稿で扱う2日目の講義では,本学薬学部2年生45名(2022年度:20名,2023年度:25名)を対象とし,4名~5名で1グループを編成した.小児服薬指導の特徴と薬剤師に必要とされる知識などについて,与えられたテーマについて議論するSGDと,グループで1つのポスターを作成させるグループワークを導入し,各々グループに発表をさせることで仲間の意見を聞く機会を設けた.

まず,前半では小児薬の特徴や子どもへの薬の飲ませ方について講義をした.具体的には服薬の工夫として薬をゼリーで包み込む,少量の水分で練って小さな団子状にする,スポイトで飲ませるなど子どもの発達段階に応じたポイントを説明した.次いで,写真を見ながら実際の処方箋や調剤,小児用製剤(シロップ,カプセル,細粒など)及び小児禁忌について薬剤の添付文書を参照しながら小児の特徴について補完した.ここまでの講義を踏まえ,学生に対し「医薬品の剤型:成人と小児の違い」を理解するために,課題1:模造紙に医薬品の剤型を書けるだけ記載する,課題2:成人と小児での服薬の違いを付箋に記載して剤型ごとに模造紙に貼付する,課題3:子どもの服薬の問題点について検討する,の3点についてSGDをした.その後全体共有としてグループ代表者から話し合いの内容の発表を15分間し,発表内容に対し筆者らがコメントをした.後半では,SGDで得た知見を踏まえ,グループワークとして共同研究者の勤務する薬局内への掲示を想定した「子ども向け服薬理解のためのポスター」の作成をさせた.講義後の自己評価シートでは小児服薬への理解度や講義の感想などを記入してもらった.1日の講義スケジュールを表1に示した.

表1

2023年度の講義のタイムスケジュール(70分×3コマ)

開始 担当教員よる授業の説明,本日の趣旨やスケジュール,講師の紹介​ 10分
講義 小児の服薬について,調剤事例,小児用製剤,小児禁忌,小児への対応の心掛け 30分
SGD 「医薬品の剤型:成人と小児の違い」について調べてみよう 40分
発表 グループ発表,全体ディスカッション,まとめ 20分
休憩 10分
グループワーク 薬局への掲示を想定した「子ども向け服薬理解のためのポスター」を作成してみよう 50分
発表 グループ発表,全体ディスカッション,まとめ 20分
総括 成育基本法,医療的ケア児支援法,小児薬物療法認定薬剤師の紹介 30分

3. 自己評価シート

SGDの振り返りのための自己評価シートでは小児薬の特徴および服薬指導の理解・把握・対応するために必要な知識について5件法(「とてもそう思う」「ややそう思う」「どちらともいえない」「あまりそう思わない」「全くそう思わない」)で選択してもらった.さらに,薬剤師として子どもや保護者に説明する際に必要とされる知識や,子どもへの服薬指導の際の心掛けや工夫,SGDへの参加に関する感想は自由記述とした.分析にはMicrosoft ExcelとテキストマイニングソフトKH Coder Version 3を使用した.自由記述は内容から共通する意味を持つ項目を集めカテゴリー化し,そのカテゴリーに含まれる代表的な回答内容を書き出した.品詞を限定せず条件を最小出現数2,描画数60とした共起ネットワーク図を作成した.共起ネットワーク図は,円が大きいほど語句の出現回数が多いこと,点線と実線では実線の方が語句同士の結びつきが強いこと,実線のなかでも太い線の方が語句の結びつきが強いことを示している.また,語句同士が比較的強く結びついている部分を自動的に検出してグループ分けを行い,その結果を色分けによってサブグラフが示される.

4. 倫理的配慮

本研究実施にあたり,本学人を対象とする医学・薬学並びに生命科学系研究倫理審査委員会の承認を得た(人医- 2021-037).学生には研究の目的及び意義,研究成果の公開先,個人情報保護,研究協力は任意であること,成績には一切関係ないことを口頭及び文書にて説明した.自己評価シートは無記名で実施し,講義終了後に回収箱に投函してもらい,学生の自由意思を確保した.

結果

学生45名全員から回答を得た.

講義を受講し,「子どもの年齢に応じた特徴の理解度」は「とてもそう思う」が82.2%(37/45)と最も高く,次いで「ややそう思う」が17.7%(8/45)であり,「どちらともいえない」「あまりそう思わない」「全くそう思わない」はともに0%(0/45)であった.「子どもの薬の特徴の理解度」は「とてもそう思う」77.8%(35/45)と最も高く,次いで「ややそう思う」が22.2%(10/45)であり,「どちらともいえない」「あまりそう思わない」「全くそう思わない」はともに0%(0/45)であった.「子どもの服薬指導における配慮の必要性の理解度」は「とてもそう思う」が95.6%(43/45)と最も高く,次いで「ややそう思う」が4.4%(2/45)であり,「どちらともいえない」「あまりそう思わない」「全くそう思わない」はともに0%(0/45)であった.自己評価シートの各項目の回答を表2に示した.

表2

自己評価シート各項目の回答(n = 45)

項目 全くそう思わない(%) あまりそう思わない(%) どちらともいえない(%) ややそう思う(%) とてもそう思う(%)
子どもの年齢に応じた特徴について理解できた 0 0 0 17.7 82.2
子どもの薬の特徴について理解できた 0 0 0 22.2 77.8
子どもの服薬指導における配慮の必要性について理解できた 0 0 0 4.4 95.6

薬剤師として子どもや保護者に説明する際に必要とされる知識に関する自由記述は,【飲ませ方・工夫】【配慮・心構え】の2つのカテゴリーに分けられた.【飲ませ方・工夫】では,「薬の成分の性質をよく知り,組み合わせで何が起きるのか,正しく保護者に伝えるコミュニケーションが必要」「大人と子どもの薬の飲み方の違いや,どうしたら子どもが薬を飲んでくれるかを知ることができた」との記載があった.【配慮・心構え】として,「自分が小さかった頃に薬に対して思っていた感じを思い出して,それを活かして服薬指導や対策を考えていくことが大切だと思った」「子どもはまだ理解しづらいので保護者への説明がメインとして大事だと感じたが,そうではなく子どもにもしっかり説明や話を聞いてあげることが必要だと感じた」「子どもの年齢等によって処方できない薬があることについてしっかり理解する必要があることはもちろん,子どもへのわかりやすい服薬指導やポスター作成など工夫することも大切だとわかった」などが挙げられた.学生が書いた回答の抜粋を表3に示した.

表3

薬剤師として子どもや保護者に説明する際に必要とされる知識について,今回学んだこと(抜粋)

【飲ませ方・工夫】
・一緒に飲んではダメな薬がある.工夫の仕方(ゼリーと飲む等)がある.
・子ども向けの薬は飲み方によって苦味が増すことがある.塗り薬のベタベタ感は不快感につながりやすい.
・薬の成分の性質をよく知り,組み合わせで何が起きるのか,正しく保護者に伝えるコミュニケーションが必要.
・大人と子どもの薬の飲み方の違いや,どうしたら子どもが薬を飲んでくれるかを知ることができた.
【配慮・心構え】
・大人よりも味を敏感に感じたり怖がったりするので,そこに対する配慮を最大限する必要があると思った.
・子どもが嫌がらない飲み方を提案するのはもちろんのこと,子どもにも理解できるように砕けた話し方だったり,図や絵を使ったりすることも大切だと思った.
・自分が小さかった頃に薬に対して思っていた感じを思い出して,それを活かして服薬指導や対策を考えていくことが大切だと思った.
・子どもはまだ理解しづらいので保護者への説明がメインとして大事だと感じたが,そうではなく子どもにもしっかり説明や話を聞いてあげることが必要だと感じた.
・子どもの年齢等によって処方できない薬があることについてしっかり理解する必要があることはもちろん,子どもへのわかりやすい服薬指導やポスター作成など工夫することも大切だとわかった.

子どもへの服薬指導の際の心掛けや工夫では「やはり子どもは薬に対して『怖い』とか『飲みたくない』といった気持ちが強いので,いかに薬に対して抵抗をなくしてあげるかが大事.そのためには,子どもが苦手な薬の味を少しでもなくしてあげるよう飲み合わせ等についても教えてあげられたらいいと思う」「服用のしにくさなど,子どもの立場に立って考えることが大切だと思った.個人差もあるので,服薬指導を完璧にこなすのは難しいと感じる」「子どもでも理解できる言葉で伝える.実物や絵など見せながら説明する」などが寄せられた.共起ネットワーク図では,「子ども」「飲む」「薬」「思う」「大切」「感じる」「説明」「理解」が多く出現し10個のサブグラフが形成された.「患者」「寄り添う」「目線」,「気持ち」「味」「苦い」「怖い」「教える」が最も強い共起関係を示した(図1).

図1

子どもへの服薬指導の際の心掛けや工夫など思ったこと

薬局への掲示を想定した「子ども向け服薬理解のためのポスター」作成は,SGDで得られた知見をもとに,具体的なテーマは各グループに委ねた.その結果,学生が作成したポスターには子どもに薬を飲んでもらうための工夫が多く見られた.例えば,子どもが好きな4コマ漫画や迷路を用いポスターの内容へ興味をひかせたり,薬を飲むことの意義や,苦い薬を美味しく飲むための工夫や飲み合わせなどの内容が書かれていた.ポスターの内容と薬局内掲示を図2に示した.

図2

ポスターの内容と薬局内掲示

SGDやグループワークを通して他者の意見を聞いて思ったことを自己評価シートに記入させた.「自分1人で出せる意見は少ないが,グループのメンバーや他のグループでの話し合いからそんな考えもあったのだと興味をもった」「他の人の意見を聞いて,自分と違った視点で意見交換できて勉強になった.疑問に思った点も違うので,そこから話が広がって視点を広げることができた」「自分自身では全く思いつかなかったアイデアを知ることができ,思っていること,考えていることを言語化しコミュニケーションを図ることの重要性を知った」などが書かれていた.共起ネットワーク図では,「グループ」「意見」「自分」「違う」「考え」「知る」が多く出現し6個のサブグラフが形成された.「自分」「意見」「グループ」「出る」「知識」「視点」,「文字」「少ない」「目」「留まる」「説明」,「アイデア」「知る」「思いつく」が強い共起関係を示した(図3).

図3

SGDやグループワークの発表を通して他の人の意見を聞いて思ったこと

考察

本研究では,2022年度および2023年度と開講したゼミナールのなかで小児服薬指導をテーマに講義を行い,その教育効果を検討した.自己評価シートの結果から学生は小児の薬の特徴をよく理解し,作成したポスターには子どもの視点に立った内容が見られ,小児服薬指導への理解度を深めていたことが確認できた.

子どもへの服薬では,子どもの年齢に応じた剤形の選択や服用方法の工夫が必要とされる.例えば6歳未満の子どもでは粉薬をそのまま飲むことが一番嫌がる服用方法であるが3),子どもの好みにあわせてゼリーの味を選び混ぜたり溶かしたりなどと薬の苦味をマスクし飲ませることができる.山田らの調査では,錠剤は5,6歳以降の小児へ使用されていることが報告されている4).錠剤も子どもの年齢や体重,嚥下機能によっては飲みやすさが異なってくる.このような子どもの年齢に応じた薬の特徴への理解について,学生の自己評価シートの結果から薬剤師には大人と子どもには薬の飲み方の違いを知り,子どもと保護者に対し飲み合わせ,服用方法など説明することの必要性が求められていた.

飲み合わせや服用方法の他に,臨床現場では子どもの薬への恐怖感を軽減し主体的に服用するための人形や絵本を用いたプレパレーション(医療機関で受ける検査や処置などについて心の準備を行うこと)や,服用中の薬に興味を持ってもらうきっかけづくりのためのクイズの開発などの工夫が行われている5,6)表3から服薬指導時の配慮・心構えとして,薬の苦みや薬自体への恐怖感,図や絵・ポスターを用い子どもの理解を促す,子どもと保護者へのコミュニケーションが必要と考えていた.自分が幼少期の経験を思い出し,子ども目線で服薬指導や対策を考えることの大切さも挙げられていた.さらに,子どもは服薬の意義や方法を理解しにくいため,どうしても保護者への説明が主とされる.そうではなく,図1に示したように「子ども」の立場に立ち,子どもの「理解」度に応じてわかりやすく「説明」し,その内容について患者本人である子ども自身が納得するインフォームド・アセントの重要性を認識していた.

上記の知識習得の確認として,薬局への掲示を想定した子ども向け服薬理解のためのポスター作成をグループワークの課題とした.作成されたポスターは,子どもの薬に多い粉薬や漢方薬,目薬の服用に関するもの,薬の苦味をマスクする飲み方をテーマにしていた.そして薬を飲むことの意義について,図2に示したようにひらがな書きや4コマ漫画,迷路ゲームを用い子どもがポスターを読んで理解することを促す工夫がされていた.これらポスターを共同研究者が勤務する薬局に掲示したところ,来局した子どもが興味深そうに見ていたり,迷路ゲームをしていたとの感想が寄せられた.小児薬を扱う薬局にて,このような子ども向けの服薬理解のポスターを作成・掲示することは,子どものインフォームド・アセントのきっかけとして有効であると考える.

また,図3から「グループ」内で「文字」が「少なく」,「目」に「留まる」ための工夫など仲間から出された「アイデア」から自分の意見とは異なる視点があることに気づいていた.そして,出されたアイデアを仲間で共有しポスターに表現していた.

以上からゼミナールの一環である「小児服薬指導」に関するSGDから,学生は子どもの薬の特徴や服薬のための工夫について学び,グループワークの課題であるポスター作成を通して実践的に子どもの視点に立った寄り添いの必要性に気づきを得ていた.本講義は薬学教育6年間のなかで学ぶことの少ない小児への服薬に関する基本的知識,態度を習得する有用な機会となっていたことが示唆された.

他方で,本研究の限界として2点挙げられる.まず,子どもへの服薬指導のロールプレイを行っていないため,技能の習得には至っていない.SGDで得た知識・態度を実践力としての技能につなげるプログラムを検討する必要がある.次いで,自己評価シートを用いたことから,学生自身による主観的評価に留まっていることである.客観的評価としてルーブリックを活用した学生同士の相互評価も取り入れたい.これら課題を踏まえ,今後は多職種連携や小児在宅医療にまで視野を広め,学生に対し小児服薬指導に関する知識と実践を学ぶ講義を提供したいと考えている.

発表内容に関連し,開示すべき利益相反はない.

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