薬学教育
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連載:日本の薬学教育のニーズを踏まえた国際的視点の浸透に向けて
総説
  • 武田 香陽子, 平田 收正
    原稿種別: 総説
    2024 年 8 巻 論文ID: 2023-044
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/09
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    日本薬学教育学会(以下,学会)は2016年に発足以降,「薬学教育・薬剤師教育」に関する様々な研究活動を行い,今年で第8回目の日本薬学教育学会年会を迎えた.しかし,国際的な視点での取り組みは十分とは言えず,我が国における「薬学教育・薬剤師教育」のさらなる充実・発展を図るためには,国際的視点から日本の薬学教育に関する評価・検証を推進することが非常に重要と言える.そのため,2021年に薬学教育学会内に国際化委員会を設置した.本委員会は国際的視点を取り入れた取り組みの推進により日本の「薬学教育・薬剤師教育」の充実・発展に貢献することを目的として,学会員を中心として,海外の教育や薬剤師活動に関する情報の収集と薬学教育学会誌などを通じた発信・共有を開始した.第8回薬学教育学会シンポジウムはその活動の一端として,2024年から適用される「薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)」が,各大学のニーズを踏まえ,質を担保したものとなるよう,国際的な視点から日本の薬学教育の質保証に関する提言・提案がなされた.本総説ではその概要を紹介する.

  • 段林 正明
    原稿種別: 総説
    2024 年 8 巻 論文ID: 2024-023
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/07
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    近年,チーム医療において多職種と連携した最適な処方設計や医師に対する積極的な処方提案を行うなどの協働ができる薬剤師の育成が求められる.このような高い資質をもった薬剤師の育成を目指し,学習成果基盤型教育として導入されたモデル・コアカリキュラム(平成25年度改訂版)では,指導薬剤師の人物像は「チーム医療の一員として活躍できる薬剤師」と具体的に示されており,学習アウトカムとして薬学実務実習生に対して目標の人物像をイメージさせることが重要である.そこで,著者は,大阪府済生会野江病院において,多職種連携に貢献できる指導薬剤師の育成に向けた教育体制の構築を目的とし,1)病院実務実習における多職種連携教育,2)グループ病院における指導薬剤師育成を目指したフィジカルアセスメント教育,3)学会や研究会と連携した指導薬剤師育成を基盤とした研修教育を実施した.本稿では,実施した取り組みの内容について報告する.

誌上シンポジウム:各領域のスペシャリストによる社会ニーズからの薬学教育への提言
  • 武田 香陽子, 鈴木 小夜
    原稿種別: 総説
    2024 年 8 巻 論文ID: 2024-002
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/09
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    2024年に社会のニーズを踏まえた新しい薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度版)が適用される.多くの大学では薬剤師に求められる資質・能力を学部教育の中で育成する学修成果に焦点が置かれていると考えられる.しかし,本来は学部教育のその先の薬学出身者が真に目指すべき,あるいはその能力を発揮し社会に貢献し得る高い専門性を発揮する社会や世界への波及が本来の成果であり,そこから学部教育をふり返ってカリキュラムを開発し,教育を改善することが求められているはずである.本シンポジウムでは既に社会に貢献し,高い専門性を発揮され,世界にインパクトを与えている先生方に領域を超えてご講演いただいた.特に,創薬から臨床までの令和5年時点におけるモデル・コアカリキュラムのC,D,E,F領域から,現在の最先端の研究の概要をご紹介いただき,その後,今後の各領域の展望と先生方が感じる今後の薬学教育に対する改善すべき点や期待などを議論したので紹介する.

  • ―新モダリティ医薬品時代の薬学教育―
    田良島 典子
    原稿種別: 総説
    2024 年 8 巻 論文ID: 2024-003
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/09
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    薬学部における6年制教育カリキュラムがスタートして,早くも19年が過ぎようとしている.6年制移行後の薬学教育では,当初の移行趣旨に沿って,臨床に係る実践的な能力の醸成(薬剤師養成)に関わるカリキュラムが拡充された.一方で,6年制課程においても,基礎薬学および基礎薬学研究の重要性は軽視されるべきではない.薬学部6年制課程を卒業した薬学生には,病院や調剤薬局における臨床薬剤師としてのみならず,創薬研究者,薬事行政官,薬学教育者などの幅広い活躍が求められている.本稿では,6年制薬学教育における「臨床」と「研究(基礎)」の二刀流の実践へ向けて,核酸医薬をはじめとする新モダリティ医薬がその架け橋を担うのではないかと考え,その可能性について,著者らの最近の研究成果を交えて議論したい.

  • 合田 幸広
    原稿種別: 総説
    2024 年 8 巻 論文ID: 2024-004
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/09
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    医療の再現性確保のため,贋物を排除し,どのように生薬の品質を保証するかを命題とし薬学が始まったと筆者は考える.歴史的に見て,日本の薬学は,医薬品の品質保証学を基礎としながら創薬科学が育ち,薬学6年制への変遷を経て,医療薬学への重要性が認識され現在に至っている.本稿では,薬学における品質保証の重要性について解説するとともに,薬学系大学において,品質保証に関連する事項について,どのような教育の仕方が望まれるのか私見を述べる.

誌上シンポジウム:大学・薬局・病院が一体となって実務実習に携わり,学生と共に育つ!
  • 角本 幹夫
    原稿種別: 総説
    2024 年 8 巻 論文ID: 2024-008
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/21
    [早期公開] 公開日: 2024/03/28
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    附属の医療施設を持たない立命館大学薬学部では,実務家(臨床系)教員に対して医療施設での研修制度を設けている.この研修では,調剤,カンファレンスへの参加,患者への服薬指導を通した自己研鑽だけでなく,研修施設と大学との連携,実務実習生へのサポートを行っている.研修施設と大学の連携では,医療現場における課題を共同研究として取り組み,研修施設薬剤師の学位取得のサポートを行ってきた.実務実習生へのサポートでは,薬物治療上の問題点把握のため病棟実習開始前に薬剤管理指導記録の記載方法について指導薬剤師と協力して指導を行っている.附属の医療施設を持たない薬学部・薬科大学においては実習施設の指導薬剤師に実習を一任しているのが現状である.全ての実習施設において実施することは困難であるが,臨床系教員が,医療施設で研修を行うことで実務実習を通した教育・研究といった施設と大学の連携が可能となってくる.

  • 尾上 雅英
    原稿種別: 総説
    2024 年 8 巻 論文ID: 2024-001
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/21
    [早期公開] 公開日: 2024/02/28
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    実務実習を発展させていくためには,受入先の薬剤師と実務家教員が連携をとることが望まれる.医学研究所北野病院(以下,当院)では,2015年より実務家教員が週1回,薬剤部業務に携わり,実務実習生の指導にも関与している.実務実習生は,代表的な8疾患を経験することが促されており,当院では病棟担当薬剤師が,実務実習前半に処方せんと電子カルテを見ながら処方解析演習として実習を行っている.実務実習生からは,「病院でしか学べないモニタリングが学べる」などの評価を得ている.一方,薬学的視点で薬物療法を考えるためには,SOAP形式でのカルテ記載が望ましく,当院では,実務家教員も参画したSOAP演習も行っている.アンケートを行ったところ,実習生全員が「薬物療法の考え方が変わった」と回答している.実務実習をより一層発展させるためには,医療現場と大学と一体となった連携強化が求められる.

  • 井上 薫
    原稿種別: 総説
    2024 年 8 巻 論文ID: 2024-010
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/21
    [早期公開] 公開日: 2024/03/28
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    近畿地区は,実務実習において「大学―薬局―病院の連携を図り,一貫性を確保し学修効果の高い実習を行う」ため,近畿地区の15薬系大学と府県薬剤師会及び病院薬剤師会が協力の下,病院と薬局のグループを構築している.大阪医科薬科大学の担当地区の1つである大阪市北区では,北野病院,済生会中津病院,住友病院,桜橋渡辺病院と近隣薬局がそれぞれ1施設完結型グループを組み22週間でコアカリキュラムの全ての要件を達成できるようにしている.そして,北区薬剤師会が4グループの実務実習内容の充実と均等化を調整している.その充実内容として,各病院の専門性をより深く習得する参加体験型学習として病院間で相互交換実習を行った,又各期の終了に「北区合同発表会」を行い大学・薬局・病院が学生の到達度を共有するなどに取り組んだ事例を紹介し,地域一体となって学生と共に指導する側も成長できる実務実習の方向性について議論を深めることができた.

  • 坂東 俊完
    原稿種別: 総説
    2024 年 8 巻 論文ID: 2024-012
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/21
    [早期公開] 公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー HTML

    大阪市北区薬局実務実習では,全指導薬剤師によって,将来の地域包括ケアシステムの一員となるべく薬局薬剤師を育成するためにどのように実習期間を有効に使うか協議を重ねてきた.各薬局施設で実習内容の濃淡があるため,実習生も実習内容の偏りがありがちになっていた.それらを解消するために,受け入れ薬局指導薬剤師は当然のこと,他の指導薬剤師ではない薬局にも要請をかけている.それはOTC販売・学校薬剤師・在宅医療等多岐に渡る.又その他にも,企業勉強会への参加の際にMRさんや地域内にある薬品卸会社の勤務薬剤師との懇談,薬品物流センターの見学等地域一体になり実習を有意義に進めるように努力している.今後も地域薬局のあらゆる役割を感じてもらうために,指導薬剤師同士で協議を進めたいと考える.

  • 萱野 勇一郎
    原稿種別: 総説
    2024 年 8 巻 論文ID: 2024-025
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/21
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    平成25年度改訂版薬学教育モデル・コアカリキュラムでは,大学,薬局,病院の連携により効果的な実務実習を行うことが求められている.大阪市北区薬剤師会では,新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から十分な実務実習や集合研修が行えない中,指導薬剤師,大学教員,実習生がオンライン上で集合し,薬局・病院で学んだ実務実習成果を合同で発表する機会を設けた.オンライン合同発表会は,実習生,指導薬剤師,大学教員それぞれの立場において,変化や気づきを提供することができた.また,地域の薬局と病院間での連携深化,薬学部とのつながり強化,さらには薬剤師偏在の問題解決にもつながる可能性が示唆された.今後も,地域医療機関と薬系大学が協働しながら,将来の日本の医療を支える薬剤師の育成に尽力することが重要である.

誌上シンポジウム:薬学教育および薬剤師職能の動向に関する国際シンポジウム
原著
  • 渡邉 慶剛, 酒井 隆全, 髙尾 郁子, 大津 史子
    原稿種別: 原著
    2024 年 8 巻 論文ID: 2023-042
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル フリー HTML
    電子付録

    薬剤師には,業務の問題点を抽出・解決する能力が期待されている.さらに,その成果を学会発表や論文作成を通じて公表し,エビデンスの創成に貢献することも重要である.しかし,研究活動を行う薬剤師は一部に留まっており,臨床現場における研究活動の実践知の継承・共有が不十分である可能性が考えられる.実践知の言語化・共有の方法としてパターン・ランゲージがある.我々は研究活動に関する実践知を共有できるパターン・ランゲージの開発を目的として検討を行った.研究経験豊富な薬剤師にインタビューを行い,研究への向き合い方,研究の種の見つけ方・育て方,研究のための土壌づくり,研究成果のアウトプットの4個のカテゴリ,8個のグループによる29個のパターン・ランゲージを開発した.パターンの妥当性評価の結果,妥当性ありと判定した合計の平均は95.0%であり,職場環境や年齢が異なる薬剤師の経験を適切にパターンとして言語化できたと考える.

  • 布目 真梨, 近藤 雪絵, 鈴木 健二, 穐山 浩, 北原 亮
    原稿種別: 原著
    2024 年 8 巻 論文ID: 2023-036
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル フリー HTML

    本研究は,薬学生を対象に「レギュラトリーサイエンスと食品中の有害物質のリスク管理」に関する講演を実施し,その前後における薬学生の意識とその変化を解析することを目的として行われた.事前および事後アンケートを分析した結果,講演後には食品の安全に対する意識,及び農薬や残留農薬に対する意識も向上したことが判明した.しかし,リスク評価に関する理解はまだ不十分であり,特に農薬等のハザードの毒性や摂取量と,それに対する有害物質のリスクの理解が不足していることが示唆された.また,リスクコミュニケーションに関しても改善の余地があると考えられた.今後,薬学生に向けて早期にリスクアナリシスの講義を行うことが重要であり,レギュラトリーサイエンスの薬学教育に対する位置付けが薬学全体の課題であることが示された.

  • 土屋 裕伴, 新井 亘, 塚田 昌樹, 松木 祥彦, 増田 裕一
    原稿種別: 原著
    2024 年 8 巻 論文ID: 2023-045
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/31
    ジャーナル フリー HTML

    臨床薬剤師のルーブリック評価の有用性について第一報で報告を行った.その中で,パフォーマンスの習熟度を可視化することや,非専門的な能力を評価することが課題となった.ルーブリック評価表に習熟度を設定し,社会人基礎力とメタ認知能力の関係性を検証した.2021年4月に入職した15病院,35名を対象とし,改訂した評価表を用いて2年間で評価した.改訂後の評価表は信頼性と妥当性が示された.習熟度を含めた評価では,2年後の総得点は中央値66.2点(四分位範囲(IQR):55.4–72.8)であった.社会人基礎力の総得点は中央値148点(IQR:134.5–157),メタ認知能力の総得点は中央値113点(IQR:104.5–126)であった.重回帰分析により,臨床薬剤師としてのパフォーマンスにはメタ認知的コントロールが強く関連していることが示された.習熟度の設定により個々の能力の差が適切に評価された.個人の資質や特性も含めて非専門的な能力を広く育成していくことが求められる.

短報
  • 河合 洋, 小泉 晶彦, 小島 裕, 高橋 直仁, 岡﨑 真理, 夏目 秀視, 関 俊暢
    原稿種別: 短報
    2024 年 8 巻 論文ID: 2023-035
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/28
    ジャーナル フリー HTML
    電子付録

    学習方略は学習成果に影響を与えることが知られているが薬学における報告は少ない.薬学生がどのような学習方略を使用し,その使用傾向が客観試験成績にどのような影響を及ぼしているかを解析した.質問紙調査と因子分析により,全体把握方略,日常活用方略,知識構造化方略,暗記方略の4つが抽出された.全体把握方略と日常活用方略は知識構造化方略と正の相関を示し,暗記方略は他3つの方略と負の相関を示した.薬学全般に関する客観試験の得点により対象者を成績階層別に分け,各学習方略の因子得点を比較したところ,群間で学習方略の使用傾向に差が認められ,客観試験成績上位群は下位群と比べて全体把握方略と知識構造化方略の因子得点が高く暗記方略の因子得点が低かった.客観試験成績は知識構造化方略と正の関連,暗記方略と負の関連を示すことが明らかとなった.薬学生の学習方略として,暗記より体系的な意味理解が有効であることが示唆される.

  • 神田 紘介, 永橋 南美, 常松 萌絵
    原稿種別: 短報
    2024 年 8 巻 論文ID: 2024-006
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/08
    ジャーナル フリー HTML

    感染症拡大時の接触回避や業務効率化による生産性の向上などを目的として,遠隔医療の普及が進められている.薬剤師においても,オンライン服薬指導が改正薬機法により2020年9月より可能になっており,従来の対面での服薬指導に加えて,オンライン服薬指導をうまく活用して効率的かつ効果的な服薬指導を行うことが求められている.そこで,オンライン服薬指導を行う環境・機器の準備状況と実施状況,教育ニーズについて明らかにするために薬局薬剤師に調査を行った.その結果,勤務する薬局にオンライン服薬指導の機器や環境が整備されているとした者は2割程度であり,そのうち実施している者は3割程度と低い状況であった.8割程度の回答者がオンライン服薬指導に関する研修を希望しており,普及が進まない要因として薬剤師のオンライン服薬指導に関わる機器や制度の知識不足や活用法の理解不足が影響していることがあることが考えられた.

実践報告
  • 坂口 裕子, 土谷 有美, 鈴木 健二
    原稿種別: 実践報告
    2024 年 8 巻 論文ID: 2023-034
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/10
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    薬学教育モデル・コア・カリキュラム令和4年度改訂版の中で,臨床薬学の根本的な見直しが必要とされている.本研究では,病棟担当薬剤師が行う疑義照会や,医師や看護師への受動的情報提供を調査し,大学での臨床薬学教育の内容を検討した.その結果,疑義照会内容は,薬剤の用量・投与量,薬剤選択,検査推奨の順に多かった.受動的情報提供では,医師は患者に合った薬剤選択や用法・用量を相談し,看護師は配合変化や投与方法などを相談していた.既報では,疑義照会は薬剤の用法・用量に関するものが大部分であったが,本研究では薬剤選択,検査推奨なども多く,薬剤師の視点が対物業務から対人業務へ変化していると考えられた.大学での臨床薬学教育は,低学年次には,医学用語を使用したコミュニケーション演習などを重視する必要があり,高学年次には,臨床薬学実践のために症例検討や多職種連携に特化した教育を強化する必要があると考えられた.

  • 岡部 文武, 長久保 大樹, 今野 亮
    原稿種別: 実践報告
    2024 年 8 巻 論文ID: 2023-041
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/22
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    本研究の目的は,MP大学薬学部で実践した対話型アクティブ・ラーニング(以下,「AL」と略す)を導入した高齢者模擬体験の学習内容を分析し,薬学生の介助能力の向上に資する知見を得ることであった.対象者は,高齢者模擬体験を受講した学生のうち,有効データは374名であった.学習内容は,学生が体験者,介助者,観察者の役割を設定した高齢者模擬体験の後,対話型ALを通じて,高齢者模擬体験における怖い・大変と感じた状況を解決するための介助方法を検討した.課題では,【姿勢】【歩行】【視覚】【聴覚】【立座行動】【階段昇降】について,体験者,介助者,観察者を通じて得た学びを自由記述させた.分析の結果,学生は不測の事態,日常生活での具体的な状況や複数の障害を有する高齢者を想定した介助方法を検討していた.そのため,高齢者模擬体験と対話型ALを組み合わせることは,薬学生の介助能力の養成に有効であったと考えられる.

  • 伊藤 雄大, 須野 学, 永田 実沙, 松原 和夫, 太田 茂
    原稿種別: 実践報告
    2024 年 8 巻 論文ID: 2023-037
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/28
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    現在の薬学部における地域医療および薬剤師の地域偏在について理解を深める実習プログラムは充分とは言い難い.そこで薬学部1年次県内枠選抜学生15名に対して,医療の地域偏在を理解することを目的とし,フィールドワークを組み込んだ地域医療薬学実習Iを実施した.本実習の満足度については実習全体の満足度(0~100%)を,有用性は「地域医療・地域偏在について説明できるか」に関する自己評価(1~4点)をアンケートにより評価した.満足度は78.0 ± 8.0%であった.有用性の自己評価は実習前の1.5 ± 0.3点に対し,実習後3.0 ± 0.3点と有意に上昇した.実習レポートの共起ネットワーク分析の結果において「薬局」「医療」「薬剤師」「地域」の語が関連性を認めた.本実習は医療の地域偏在に関する学生の理解に繋がり,フィールドワークは学生に対して薬局や薬剤師,医療の地域偏在に関する気付きを与える可能性がある.

  • 櫻井 浩子, 似内 雄太, 山根 孝太
    原稿種別: 実践報告
    2024 年 8 巻 論文ID: 2024-005
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/08
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    薬学教育モデル・コアカリキュラムには,小児等特別な配慮が必要な患者への服薬指導において適切な応対ができることが掲げられているが,実際は小児の特徴や服薬支援を学ぶ機会は限定的である.東京薬科大学薬学部2年生の履修科目「ゼミナール」のなかで,小児服薬指導についてスモールグループディスカッション(SGD)を用い講義を行った.自己評価シートの記載内容の結果,学生は薬剤師には子ども特有の薬の飲み方の違いを知り,子どもと保護者に対し飲み合わせ,服用方法などを説明する必要性などの気づきを得られたことがわかった.学生が作成したポスターには多くの工夫が見られ,子どもの目線に立ち,ひらがなや迷路などを用い服薬について患者本人である子ども自身が納得するインフォームド・アセントの重要性を学生が認識していたことが考えられる.講義は小児服薬指導に関する基本的知識,態度を習得する有用な機会であったことが示唆された.

  • 岩澤 晴代, 岸本 成史, 長谷川 仁美, 奥秋 美香, 板垣 文雄, 飯島 亮介, 中村 英里, 村上 勲, 山岡 法子, 渡辺 茂和, ...
    原稿種別: 実践報告
    2024 年 8 巻 論文ID: 2024-011
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/25
    ジャーナル フリー HTML

    帝京大学薬学部では,医療面接におけるコミュニケーション能力の向上を目的として,5年次に模擬患者(SP)参加型の演習を2010年度から実施しているが,受講学生は履修時期によって実務実習の経験の有無が異なっていた.そこで,本演習を受講した学生の医療面接におけるコミュニケーションスキルに関する自己評価および振り返りの内容を実務実習の経験の違いにより分析し,SP参加型演習の実施時期による学びの違いについて検討した.その結果,【患者とリラックスしてコミュニケーションをとる】,【副作用発現を予測する】,【患者が訴えた症状を詳細にきき出す】については,実務実習の経験を経るにしたがって受講前と比べて受講後の自己評価の増加率が大きくなることが示された.また,シミュレーション後の振り返りから,実務実習の経験により学びの深さが異なり,他学生の模擬医療面接からの学びを意識することが分かった.

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