日本植物病理学会報
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原著
Fusarium solani f. sp. eumartii によるトマトフザリウム株腐病(新称)
中山 喜一青木 孝之
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2010 年 76 巻 1 号 p. 7-16

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抄録
2004年5~6月,栃木県の施設栽培トマト(土耕栽培)で,茎の基部が激しく褐変腐敗し,病勢が進展すると立枯症状を呈する病害が発生した.病斑部から常法により病原菌を分離したところ,Fusarium 属菌が高率に分離された.分離菌株の小分生子は,0~1隔膜,楕円~紡錘形で長い分生子柄上に擬頭状に形成された.大分生子は,1~5隔膜,鎌形であった. 厚壁胞子は表面平滑または粗であった.分離菌株をトマトに接種したところ原病徴が再現され,接種菌が再分離された.トマト以外の植物に対する寄生性を検討したところ,インゲンマメ‘初みどり2号’およびソラマメ‘讃岐長莢早生蚕豆’に病原性が認められた.TEF1-α遺伝子による系統解析により,分離菌株はO’DonnellによるFusarium solani 種複合体のクレード3に属したが,交配群MP-I~VIIのいずれとも異なった系統群であることが判明した.また,分離菌株は,Romberg and Davis(2007)の報告したF. solani f. sp. eumartii とTEF1-α遺伝子の塩基配列が一致し,rDNA ITS領域の塩基配列も高い相同性が認められることから,分離菌株をF. solani f. sp. eumartii と扱ってよいと判断した.本病をF. solani f. sp. eumartii によるトマトフザリウム株腐病と呼ぶことを提案する.
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© 2010 日本植物病理学会
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