日本植物病理学会報
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原著
ファゼオロトキシン産生能を失ったキウイフルーツかいよう病菌(Pseudomonas syringae pv. actinidiae)の愛媛県における出現と分布
三好 孝典清水 伸一澤田 宏之
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2012 年 78 巻 2 号 p. 92-103

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抄録
愛媛県では伊予市と松山市/砥部町においてキウイフルーツかいよう病が発生している.このうち,伊予市の発生園では,「黄色の明瞭なハローを伴う病斑」が葉に形成されていた.一方,松山市/砥部町における罹病葉には「ハローを伴わない病斑」のみが認められた.両タイプの発生園から分離した病原細菌の各種表現型と遺伝型を解析した結果,いずれの菌株もPseudomonas syringae pv. actinidiaeと同定することができた.しかし,生物検定と接種試験を行ったところ,ハローのない園地に由来する菌株はファゼオロトキシン(Ptx)産生能を有しておらず,葉にハローを誘導できないことが明らかとなった.一方,これらの菌株からは,Ptxの産生に関与するargK-toxクラスターの構成遺伝子群(amtA, ptx, ORF3およびargK)がPCR検出できた.なお,諸外国ではコロナチン産生遺伝子(cfl)やエフェクター遺伝子(hopA1)を保持しているキウイフルーツかいよう病菌が報告されているが,これらの遺伝子は今回の分離菌株からはPCR検出できなかった.以上のことは,ハローのない園地由来のPtx非産生株は,わが国に広く分布しているPtx産生株において,Ptx産生に関わるメカニズムになんらかの欠損が生じ,その産生能が失われた変異株であることを示している.現地調査と接種試験の結果,Ptx非産生株は産生株に比べて枝に対する病原力が弱いことが明らかとなった.したがって,Ptxは枝に対する病原力決定因子の1つとしても機能している可能性が考えられる.また,愛媛県内ではPtx産生株は伊予市に,非産生株は松山・砥部地区において,それぞれ排他的に分布していることも確認できた.
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© 2012 日本植物病理学会
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