抄録
栽培圃場の土壌からPhomopsis sclerotioidesをリアルタイムPCRで高感度に定量するため,土壌DNAの最適抽出法および土壌の種類による本菌DNAの抽出効率やPCR阻害が定量性に及ぼす影響を検討した.抽出法の検討では,市販キットを用いたビーズビーティング抽出工程における土壌の前処理の効果,土壌の破砕条件および抽出液の精製条件を検討した.その結果,土壌の前処理により本菌DNAの検出感度が向上することを確認するとともに,検出に適した土壌抽出条件を明らかにした.本抽出条件を用いることで,本菌の定量の感度が従来よりも高まり,1 cfu/g(生土)相当の菌密度の土壌からの検出・定量が可能となった.DNAの抽出効率が土壌により変動することが確認されたため,現地の汚染圃場の土壌に対しては,標準試料の添加回収に基づき抽出効率を補正した本菌DNAの定量値と幼苗検定による発病度との関連を調べた.その結果,両者間で高い正の相関が見られた.以上のことから,本研究で明らかにした本菌DNAの抽出法に基づく高感度定量法は,圃場の発病ポテンシャルの評価にも活用出来る可能性があると考えられた.