日本植物病理学会報
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原著
ナシ葉退緑斑点随伴ウイルスの国内分離株の遺伝的多様性
竹山 さわな鈴木 良地神山 光子千秋 祐也𡈽田 聡久保田 健嗣
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2022 年 88 巻 1 号 p. 1-11

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抄録

近年,日本のナシ(Pyrus)において,葉の退緑斑点症状や早期落葉が,東北,関東,北陸,東海,中国,四国,九州の各地方で認められ,また,一部地域の発症葉サンプルからは,中国で同様の症状を呈するニホンナシ(P. pyrifolia)から報告された新種エマラウイルスのpear chlorotic leaf spot-associated virus(PCLSaV)が見出されている.本研究では,2017年,および2019年,2020年に東北から九州までの13県の栽培圃場のナシから採取されたニホンナシおよびセイヨウナシ(P. communis)の退緑斑点症状発症葉および非発症葉について,RT-PCRによってPCLSaVのRNA1–RNA5の検出を行った.その結果,いずれの分節も,発症葉では23サンプル全てで陽性,非発症葉は14サンプル全てで陰性となり,PCLSaVが,日本国内の広い地域で発生しているとともに,ニホンナシおよびセイヨウナシにおける葉の退緑斑点症状の発生に関与していることが強く示唆された.また,2017~2020年に採取されたPCLSaV分離株の遺伝的多様性解析を行った.日本の分離株はRNA1–RNA5で共に99.2~100%と,非常に高い配列同一性を示した一方で,中国の既報の3分離株間の同一性は90.4~99.5%と低かった.分子系統樹解析においても,日本の分離株はRNA1–RNA5のいずれも単一のクレードを構成し,日本の分離株は,中国の3分離株と比較して,互いにごく近縁であり,遺伝的多様性が低いと考えられた.

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© 2022 日本植物病理学会
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