日本植物病理学会報
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88 巻, 1 号
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原著
  • 竹山 さわな, 鈴木 良地, 神山 光子, 千秋 祐也, 𡈽田 聡, 久保田 健嗣
    2022 年 88 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2022/02/25
    公開日: 2022/03/26
    ジャーナル フリー
    電子付録

    近年,日本のナシ(Pyrus)において,葉の退緑斑点症状や早期落葉が,東北,関東,北陸,東海,中国,四国,九州の各地方で認められ,また,一部地域の発症葉サンプルからは,中国で同様の症状を呈するニホンナシ(P. pyrifolia)から報告された新種エマラウイルスのpear chlorotic leaf spot-associated virus(PCLSaV)が見出されている.本研究では,2017年,および2019年,2020年に東北から九州までの13県の栽培圃場のナシから採取されたニホンナシおよびセイヨウナシ(P. communis)の退緑斑点症状発症葉および非発症葉について,RT-PCRによってPCLSaVのRNA1–RNA5の検出を行った.その結果,いずれの分節も,発症葉では23サンプル全てで陽性,非発症葉は14サンプル全てで陰性となり,PCLSaVが,日本国内の広い地域で発生しているとともに,ニホンナシおよびセイヨウナシにおける葉の退緑斑点症状の発生に関与していることが強く示唆された.また,2017~2020年に採取されたPCLSaV分離株の遺伝的多様性解析を行った.日本の分離株はRNA1–RNA5で共に99.2~100%と,非常に高い配列同一性を示した一方で,中国の既報の3分離株間の同一性は90.4~99.5%と低かった.分子系統樹解析においても,日本の分離株はRNA1–RNA5のいずれも単一のクレードを構成し,日本の分離株は,中国の3分離株と比較して,互いにごく近縁であり,遺伝的多様性が低いと考えられた.

  • 池田 健太郎, 古屋 修, 小林 智彦
    2022 年 88 巻 1 号 p. 12-17
    発行日: 2022/02/25
    公開日: 2022/03/26
    ジャーナル フリー

    本研究では,ポリカーバメート水和剤および有機銅水和剤を鉢物アジサイが露地で管理されている期間に散布し,A. valerianellaeによるアジサイ斑点細菌病を抑制できるかどうかを検討した.その結果,ポリカーバメート水和剤を散布した場合,5回の試験中4回で,無散布と比較し発病が有意に減少した.また,有機銅水和剤を使用した場合では,3回の試験中2回で,無散布と比較して発病が有意に減少した.一般化線形混合モデルで解析した結果,ポリカーバメート水和剤を散布した場合の回帰係数の推定値は,参照の無散布に対して-0.70であり,発病を減少させる傾向がみられた(p<0.01).また,有機銅水和剤の場合においても-0.90であり,ポリカーバメート水和剤と同様に発病を減少させる傾向が認められた(p<0.01).これらの結果は,鉢物アジサイの生産現場における斑点細菌病の防除のみならず,A. valerianellaeによって引き起こされる細菌病害の防除に対しても,重要な情報となると考えられる.

  • 伊賀 優実, 渡邊 唯衣, 佐藤 友子, 寺田 耕也, 藤 晋一
    2022 年 88 巻 1 号 p. 18-26
    発行日: 2022/02/25
    公開日: 2022/03/26
    ジャーナル フリー

    近年,植物病害に対して強酸性電解水を用いた防除が行われている.イネにおいてもいもち病や細菌病で検討されている.しかしながら,これまでに使用されている強酸性電解水については主成分である次亜塩素酸が不安定であるため,有機物が存在すると容易に効力が失われてしまうことが課題とされていた.そこで,有効成分の長期保存が可能な弱酸性次亜塩素酸水によってばか苗病,いもち病(苗いもち),苗立枯細菌病,もみ枯細菌病(苗腐敗症)および褐条病に対して種子消毒効果があるか検証した.その結果,催芽時処理によりばか苗病,いもち病(苗いもち),もみ枯細菌病(苗腐敗症),苗立枯細菌病および褐条病に対して防除効果が認められた.浸種前処理については,ばか苗病,いもち病(苗いもち)で効果が認められたものの,苗立枯細菌病では効果が認められなかった.加えて,弱酸性次亜塩素酸水,強酸性電解水,次亜塩素酸ナトリウム水溶液の防除効果の比較をいもち病(苗いもち),苗立枯細菌病,もみ枯細菌病,褐条病に対して行った.

病害短信
令和3年度地域部会講演要旨
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