本研究では,既報のオルソトスポウイルスを識別するマルチプレックスRT-PCR法(Uga and Tsuda, 2005; Kuwabara et al., 2010)を改良し,近年国内で新たに発生したウイルスを含め,現在国内のナス科作物で確認されている全6種[トマト黄化えそウイルス(TSWV),tomato zonate spot virus(TZSV),インパチエンスえそ斑点ウイルス(INSV),キク茎えそウイルス(CSNV),スイカ灰白色斑紋ウイルス(WSMoV)およびトウガラシ退緑ウイルス(CaCV)]を検出するためのマルチプレックスRT-PCR法を開発した.プライマーの設計,RT-PCRの条件検討の結果,最適化した条件で,これらのウイルスが感染したナス科植物からTSWV(831 bp),TZSV(734 bp),INSV(592 bp),CSNV(502 bp),WSMoV(395 bp),およびCaCV(324 bp)由来の種特異的増幅産物が確認された.さらに,本法を用いることで,供試したオルソトスポウイルスのいずれの組合せでも,ウイルスを同時に検出することができた.したがって,本手法は,ナス科作物に感染する6種オルソトスポウイルスの同時検出に有効であると考えられた.
新潟県が2005年に導入したコシヒカリマルチラインは,侵害レースの頻度上昇や分布拡大を抑制し発病抑制効果を維持するため,使用する真性抵抗性を計画的に変更している.この利用方法の妥当性を検証するため,侵害レース多発生地区を含む全県でレース頻度を調査した.
本マルチラインの導入後2~3年で優占レースが001.0,003.0から007.0,037.1に交代する急激なレース頻度の変化が認められた.局地的に侵害レースが高頻度で確認された複数の地点で継続してレース頻度を調査した.その結果,侵害レースは地域内の伝染環で越冬し,感染可能割合が高い年に頻度が高くなり,構成系統の交代により感染可能割合が30%となった年に頻度が著しく低下した.前年の侵害レースの頻度が低いほど当年も確認される確率が低く,感染可能割合30%の年が2~3年続くとその後に感染可能割合が再び高くなっても侵害レースは確認されなかった.これらから,構成系統の交代が侵害レースの頻度上昇や分布拡大の抑制に有効なことが明らかとなった.
コシヒカリマルチラインは,導入から18年間,発病抑制効果を維持しており,計画的に構成系統を変更するマルチラインの本栽培法は,イネいもち病の真性抵抗性遺伝子を持続的に利用する方法の1つとして有効であると考えられる.
日本植物病理学会報第87巻4号に掲載の原著論文「トウモロコシすす紋病の発生に好適な環境条件,著者:岡部郁子」(214–221頁)の217頁,図2Cにおいて誤りがございました.
【誤】
217頁 図2C
【正】
217頁 図2C
【正】では,丸枠で示した白抜き逆三角形(「侵入に必要な条件」を示す)を削除.本訂正は,査読過程における条件判定の基準変更が図に反映されていなかったことを修正するものであり,論文の結論には影響しないものです.現在J-STAGEで確認できる内容は訂正した内容になります(2023年7月29日訂正).