日本植物病理学会報
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瓜類露菌病菌の分化
(II). 胡瓜及南瓜上露菌病菌の形態の比較
岩田 吉人
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1942 年 11 巻 4 号 p. 172-185

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抄録
1. 本研究は著者が曩に寄生性の相異を認めた胡瓜及南瓜上露菌病菌の形態的比較を行つたものである。
2. 形態の比較は東京産及三重産菌を用ひ分生胞子 (游走子嚢) の長さ及幅, 擔子梗の全長, 主軸の長さ及幅, 分岐囘數等に就き行つたが, 露菌病菌分生胞子及擔子梗の形成時の温度による變異大なる事を顧慮し, 其等の形成時の温度を一定に保ち同一温度に於て形成されたものに就き比較した。又各種温度に於て形成された分生胞子及擔子梗の大さを測定し其の形成時温度による變異の状態をも併せ比較した。
3. 分生胞子, 擔子梗共に其の形成時温度により大さに大なる變異を示す事を認めた。
4. 胡瓜菌, 南瓜菌共に分生胞子の長さ及幅は形成時温度高き程大なる傾向を示し, 擔子梗の全長, 主軸の長さ及幅, 分岐囘數は低温又は高温では小, 其中間の温度では大となる傾向が認められた。
5. 分生胞子の大さは各比較區共南瓜菌の方胡瓜菌より常に稍々大であり, 殊に東京菌に於ては相當大なる相異を認めたが一般に其差は著しくなかつた。又南瓜菌では東京産菌と三重産菌の間にも可成の相異を認める事が出來た。
6. 擔子梗全長及主軸の長さに就て三重産胡瓜菌及南瓜菌は測定を行つた11℃乃至30℃の6温度區全般より比較する時は兩菌略々同様であるが, 胡瓜菌では22℃乃至25℃で大形を示すに對し南瓜菌では14℃乃至18℃で大形を示し, 形成時温度による變異の状態は兩者の間に顯著な相異を認めた。主軸の幅, 分岐囘數に就ては兩者に著しき相異を認めなかつた。又東京産胡瓜菌は三重産胡瓜菌に比し全長, 主軸の長さ, 幅, 分岐囘數何れも大であつた。
7. 東京産菌及三重産菌を通じ胡瓜菌及南瓜菌の分生胞子及擔子梗の比較, 考察の結果, 兩者を直ちに形態的異種と斷定する事は妥當でないと考へられる。而して兩菌の病原性の相異より此處には胡瓜上及南瓜上露菌病菌は相互に異生態種と認める事とする。
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