抄録
(1) 近年, 千葉縣及び神奈川縣の一部のナンキンマメに一種の Diplodia によつて起る莖腐病の發生が認められた。
(2) 本菌は罹病莖及び葉柄上に柄子殼を形成し, 初め無色1胞, 後に暗色1胞及2胞の胞子を形成する。完全時代は見出されなかつた。
(3) 本菌は12∼40°Cで生育し, 最適温度は30∼31°Cであり, また最適水素イオン濃度は4.0∼6.1を示した。各種の培地によく生育する。
(4) 本菌はナンキンマメの他にインゲンを枯死せしめ, ワタの〓, マクワウリ, リンゴ及びミカンの果實を腐敗せしめたが, アズキ, ダイズ, ソラマメ, トウモロコシ及びサツマイモには輕微な病原性を示した。
(5) 本菌はその形態, 生理的性質及び病原性からみて Diplodia gossypina, D. tubericola, D. natalensis, D. frumenti 等に類似し, これらを綜合した種の1系統とみられる。種名についてはなお研究すべき點があるが, Jacoway 等に做い一應, D. natalensis としておく。