日本植物病理学会報
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稲胡麻葉枯病における脱水素酵素の組織化学的証明
野津 幹雄
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1959 年 24 巻 2 号 p. 114-118

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抄録
病植物異常代謝を追究する一端として, 稲胡麻葉枯病罹病葉における脱水素酵素の活性を, blue tetrazolium (BT) を用いて組織化学的に観察した。その結果, 稲葉におけるBT反応の存在は柔組織細胞であつて, 導管, 厚膜細胞, 機動細胞, 表皮細胞において認められなかつた。稲葉の病斑拡大と関連して組織の褐変部分の周辺に強い反応が現れ, 病斑が一定の大きさになるに従つて反応部分は消失した。接種5日以後の典型的病斑においてBT反応は褐変細胞には認められず, 中毒部の反応は健全部より弱かつた。葉鞘裏面表皮細胞には極めて弱い反応があるのみで, 菌糸が侵入してもそれによつて特別の反応は現われなかつた。一方侵入菌糸には極めて強い反応があつた。胞子の発芽過程においては, 胞子の両端の原形質に強い反応があり, それにもまして附着器における反応は顕著であつた。なおBT反応によつて認められる本酵素の存在は稲葉では葉緑体のグラナに相当する部分であり, 稲胡麻葉枯病菌ではミトコンドリアであると推察された。
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