日本植物病理学会報
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イネ幼苗に吸収させた殺菌剤のいもち病発病抑制効果および葉上水滴中におけるいもち病菌分生胞子の行動について
達山 和紀
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1963 年 28 巻 3 号 p. 165-170

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抄録

本報告は感受体に吸収させた昇コウほか数種の殺菌剤のいもち病防除効果を検討するとともに, いもち病菌が感受体に接触後, 侵入前に殺菌剤の影響をどのように受けているかについて観察した結果をのべたものである。
供試殺菌剤はすべてイネ幼苗に吸収され, その結果いもち病の発病を抑制するが, 殺菌剤の種類によつて抑制効果に強弱がみとめられる。しかし, いもち病発病抑制効果の強さと, 葉上水滴のいもち病菌分生胞子の発芽阻止の強さとの間に, 必ずしも相関関係がない。無機重金属塩による発病抑制効果は, 分生胞子の附着器形成以後の段階で強く働いているものと考えられる。
葉上水滴の発芽阻止は, 主として体内に浸透した殺菌剤そのものの作用によると考えられるので, これは殺菌剤の直接効果であり, 殺菌剤の刺激作用などによつて起こる感受体生理の変化が間接的に病原菌に対する抵抗力を高め, 菌の生育を抑制している場合を真の間接効果 (耐病性増強効果13)) と考えたい。

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