日本植物病理学会報
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Pellicularia filamentosa の土壌中における消長について II
アマ畑土壌の中における Rhizoctonia solani 系統の交代
宇井 格生三井 康原田 幸雄
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1963 年 28 巻 5 号 p. 270-279

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抄録

1. アマ畑においてリゾクトニア病の発生経過を見ると, 生育初期に立枯と, 開花後に茎腐れの症状が現われる。札幌近郊で, 前者は6月初めまで, 後者は7月中旬より8月初めの収穫時までの間に見られる。
2. 立枯, 茎腐れの症状を呈するアマからそれぞれ病原菌の分離を行なうと, いずれも Rhizoctonia solani が分離され, 二つの時期に分離される菌株群の間に著しい培養性質のちがいが認められ, 前者を春型, 後者を夏型とした。
3. 同じ畑の土壌から, アマ茎 trap 法たよつて菌の分離を行なうと, 6月中旬から8月中は夏型菌株が, その前後の時期に春型が得られる。
4. 培養性質, 形態から, 春型は明らかに Pellicularia filamentos に属し, 夏型は P. praticola に類似する点もあるが明らかでない。ここでは, 両者を複合種である Rhizoctonia solani に属するとして取り扱つた。
5. 培地上, 土壌中における両系統の生育は, 春型菌は低い温度で良好で, 夏型菌は高い温度で速やかとなる。
6. 春型菌のアマ子苗に対する病原性は, 低い温度 (13°, 18°C) で強く, 25°になると低下する。
7. 春型菌の病原性は, アマの子苗に対してのみ強く, 成熟したアマの茎を侵害することができないが, 夏型菌はこれと反対に, 成熟茎を旺勢に侵害する。
8. 春型, 夏型両菌を混合接種した土壌中で, 温度の低いときは春型菌が活動し寄主を侵害する。温度が高くなると春型菌と同時に夏型菌も活動を始め, 発病にも関与する。
9. アマ畑の中に, 生態的に異なつた2つの系統の Rhizoctonia solani が生存し, 寄主の生育, 季節の推移にともない消長活動していた。すなわち, アマの幼弱な, 気温の低い春と初夏には春型菌が, 温度が高くなり, 開花期を過ぎた夏には夏型がそれぞれ活動する。

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