日本植物病理学会報
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クワ萎縮病,ジャガイモてんぐ巣病,Aster yellows感染ペチュニアならびにキリてんぐ巣病の罹病茎葉篩部に見出されたMycoplasma様(あるいはPLT様)微生物について
土居 養二寺中 理明与良 清明日山 秀文
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1967 年 33 巻 4 号 p. 259-266

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抄録

1. クワ萎縮病の罹病新梢の茎葉を電子顕微鏡観察したところ,既知の植物ウイルス粒子様のものは見出されなかつたが,篩管,ときに篩部柔細胞内に,大小(80∼800mμ)多数の球∼不斉楕円形のMycoplasma様あるいはPLT様の粒子が見出された。これらは2層の限界膜(約8mμ)に包まれ,細胞壁はなく,小形(100∼250mμ)の粒子は概ね球形でribosome様顆粒(径約13mμ)で充たされ,ときに核質様の繊維状領域を示すものもあり,大形(300mμ以上)の粒子は中心が空虚で僅かに核質様の繊維が認められ,顆粒は周辺に偏在する。大小粒子が篩管内に混在する点からみて,小形粒子が生長して大形粒子となるらしく,またときに大形粒子が一部くびれて小形粒子ができるごとき像,小形粒子が大形粒子の内部に数個生じ大形粒子が崩解するような像も認められた。健全植物にはこのような粒子は見出されない。なお,テトラサイクリンで萎縮病から回復したクワ茎葉からはこの粒子は見出されなくなつた。
2. ジャガイモてんぐ巣病の罹病茎葉篩部にも大形粒子がやや多いが,同類の大小粒子が見出された。異常肥大した篩部柔細胞の細胞質には大形粒子が充満する例がしばしば認められた。
3. Aster yellows感染で叢生萎黄症状を示したペチュニア茎葉篩管部にも前2者と同類の大小粒子が見出された。
4. 典型的なてんぐ巣症状を示すキリの側生枝茎葉の篩管内にもクワ萎縮病と同類の大小粒子が見出された。症状の著しい場合は多くの粒子が見出される傾向がある。
5. 4種の“叢生萎黄”グループに属する植物病で茎葉篩部に共通して見出された同類の粒子は植物寄生では未報告であるが,それらの形状,構造,所在様式などから,Mycoplasmaに近い寄生微生物であるとの結論に達したので,さらにそれらの病原的意義について若干の考察を行なつた。

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