日本植物病理学会報
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ササゲおよびアズキにモザイク病をおこすウイルスとその種子伝染性
土崎 常男與良 清明日山 秀文
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1970 年 36 巻 2 号 p. 112-120_1

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抄録

1) 関東地方で採集したササゲ・モザイク病2株,市販黒種十六ササゲ種子から由来した発病株1株につき病原ウイルスの同定を試みた。3株とも寄主範囲はマメ科の一部とアカザに限られ,不活化温度50-60℃,希釈限界10,000-100,000倍,保存限界1-6日で,3種のアブラムシで伝搬された。種子伝染はササゲでおこるが,アズキではおこらない。ウイルス粒子は長さ約750mμのひも状である。以上の結果から供試ウイルスは日野が福岡で採集したウイルスに性質が近く,Andersonの分類にしたがえば第2群に属するものと結論され,ウイルスの名称としてLovisoloらのcowpea aphid-borne mosaic virus (CAMV)を用いることとした。
2) 関東地方で採集したササゲのモザイク株から寄生性の広いウイルスが分離された。これは粒子の形態,CMV抗血清との反応からササゲで全身感染するキュウリ・モザイク・ウイルス(CMV)の特殊な系統と考えられ,ササゲで種子伝染はしなかった。
3) 関東地方で採集したササゲのモザイク株からbroad bean wilt virus群に属するサブクローバ・モットル・ウイルス(SMV)が検出された。
4) 判別寄主を用い,関東地方での上記3種のウイルスの分布を調べた。供試56株のうち,CAMVが49株から,CMVが3株から,SMVが2株からそれぞれ検出された。
5) 東北農試刈和野試験地から分譲されたアズキ大館2号種子から由来した発病株につきウイルスの同定を試みた。寄主範囲は一部のマメ科植物に限られ,不活化温度55-60℃,希釈限界10,000倍以上,保存限界5-7日で2種のアブラムシで媒介された。アズキで種子伝染し,粒子の形は長さ約750mμのひも状で,CAMVとの間に干渉効果が認められた。以上の結果から供試ウイルスは日野が記載したアズキ・モザイク・ウイルス(AzMV)と同定された。
6) 東京都下で採集したアズキのモザイク株から,寄主範囲,粗汁液中のウイルスの不活化条件,アブラムシの伝搬などの性質がCAMVと一致し,CAMVと同定されるウイルスが検出された。7) 東京都下で採集したアズキのモザイク株から寄生性の広い,不活化温度70-75℃,希釈限界10,000-100,000倍,保存限界5-7日,アブラムシで伝搬されるウイルスが検出された。このウイルスは粒子の形態,CMV抗血清との反応からCMVと同定された。アズキで種子伝染は認められなかった。
8) 上記3種のウイルスの関東地方での分布を判別寄主を用いて調べた。各ウイルスの分離される割合は混合感染も含めてCMVが約55%, AzMVとCAMVがそれぞれ32%と26%であった。

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