日本植物病理学会報
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異なった黒斑病菌のstrainをサツマイモ塊根に接種した際にみられるエチレン生成およびその他宿主の反応の相違について
兵藤 宏瓜谷 郁三
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1970 年 36 巻 2 号 p. 98-105

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抄録

宿主を異にする3種類の黒斑病菌(サツマイモ黒斑病菌,コーヒー黒斑病菌,スモモ黒斑病菌)をサツマイモ塊根および茎に接種して,宿主の感染組織からのエチレンの生成量を調べた。サツマイモ黒斑病菌感染組織ではいちじるしい量のエチレンが生成されたが,コーヒー黒斑病菌感染組織では生成量はかなり低く,スモモ黒斑病菌感染組織ではさらに生成量は少なかった。これらの結果は著者らがすでに報告したようにイポメアマロンを含むフランテルペン類の生成がサツマイモ黒斑病菌感染組織でもっとも高く,コーヒー黒斑病菌感染組織ではかなり低く,スモモ黒斑病菌感染組織ではもっとも少ないという結果とよく似ている。すなわちエチレンの生成はフランテルペン類の場合と同様に病原性の強い菌を接種した組織ほど高いことを示している。エチレン生成は菌の侵入,気菌糸の生育の度合とよく対応していることから,エチレンの生成量を菌の侵入,生育の度合をあらわす1つの指標とした。中抵抗性の農林1号を宿主に用いてあらかじめコーヒー黒斑病菌,スモモ黒斑病菌を接種したのちにサツマイモ黒斑病菌を接種すると,サツマイモ黒斑病菌の侵入がおさえられることがわかった。サツマイモ黒斑病菌侵入阻止効果はコーヒー黒斑病菌の前感染により非常に強くあらわれる。サツマイモ黒斑病菌の接種1時間前にコーヒー菌を接種することにより50%の阻止(エチレン生成量の測定から)がみられた。これら非病原性菌の前感染による病原性菌の感染阻止機構について考察した。同時にこの問題と関連してなぜ非病原性菌が宿主の表層にとどまり内部に深く侵入できないかということについて推察を行なった。

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