抄録
1952年ごろ,北海道の道南地方に確認されたダイズ矮化病は,最近北海道各地に発生し,その被害はきわめて大きい。ダイズにおける病徴は大別して矮化型と縮葉型とに分けられる。病原ウイルスは汁液伝染,種子伝染できず,ジャガイモヒゲナガアブラムシ(Aulacorthum solani (Kaltenbach))によってうつされる。アブラムシを用いて,10科43種の植物に接種した結果,レンゲ,ソラマメ,ツルマメ,エンドウ,ナンキンマメ,コモンベッチ,シロクローバ,ラジノクローバ,アカクローバ,アルサイククローバ,クリムソンクローバ,サブタレニアンクローバおよびサックリングクローバなどのマメ科植物に感染することがわかった。とくにアカクローバとシロクローバ(ラジノクローバ)は,自然で無病徴感染しており,本ウイルスの感染源として,重要な役割を果たしている。供試した45種のダイズ品種は,すべて感染したが,病徴に差異がみられた。
ジャガイモヒゲナガアブラムシは,罹病植物を60分間吸汁することにより,ウイルスを獲得することができ,罹病植物上で飼育した保毒虫は,健全植物を30分間吸汁することにより感染することができた。いずれの吸汁時間も長いほど,伝染率が増大した。ウイルスの最短虫体内潜伏期間は15時間と27時間の間にあった。アブラムシは脱皮後も伝染力を保持し,最長21日間ウイルスを保有していた虫もあったが,大部分は感染源を離れるにつれて,伝染力を失う傾向があった。
ダイズ矮化ウイルスの伝染様式は,ジャガイモ葉巻ウイルスやpea enation mosaic virusのような循環型ウイルスときわめてよく類似していた。しかし,本ウイルスは寄主範囲,病徴,および媒介虫の種類から,今まで報告されたどのウイルスとも異なっていた。