日本植物病理学会報
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腐敗病細菌のペクチン質分解酵素ペクチントランスエリミナーゼの組織崩壊作用
大内 昭富永 時任
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1974 年 40 巻 1 号 p. 22-29

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抄録
腐敗病細菌,N-6301株のペクチントランスエリミナーゼ(endo-PTE)を純化して,本酵素の組織崩壊作用を検討した。該菌株の培養液より調整した遠沈上澄液に,硫安を0.2∼0.6飽和になるように加えて,共存するペクチン酸トランスエリミナーゼ(PATE)をとりのぞき,PTE活性に富む画分を得た。この硫安塩析物を0.005M pH6.2のリン酸緩衝液で透析したのち,同一緩衝液で前処理したDEAE-セルロースカラムで分別した。PTEは該カラムによって,非吸着部(“PTE I”)と吸着部(“PTE II”)に分かれ,その大部分が前者の画分に回収された。“PTE I”画分に冷アセトンを60%濃度になるように加え,得られた沈査を0.005M, pH6.8のリン酸緩衝液で透析したのち,同緩衝液で前処理したCM-セルロースカラムに吸着させた。食塩の濃度を連続的に高めると,該画分の成分はさらに4つの分画に分かれ,PTE活性は第4番目のピークにのみ見出された。この活性画分を再び同カラムで処理して,遠沈上澄液に対し,約362倍の比活性を示す酵素標品を得た。本標品はチゼリゥス電気泳動および超遠心法による分析で,いずれも単一のピークを示した。なお,純化酵素にはポリガラクトウロナーゼ,およびペクチンエステラーゼ活性は検出されなかったが,痕跡程度のPATE活性が混在した。以上の分別および純化の一連の操作において,組織の崩壊作用はつねにPTE活性画分た見出された。また,2, 3の物理的性質(至適温度およびpH,不活化温度およびpH)において,組織崩壊作用とPTE活性の間に顕著な差異はなかった。したがって,本菌株の組織崩壊作用はPTEにもとづくと判断され,プロトペクチナーゼ,マセレーション酵素あるいはphytolysinなどの存在は否定された。
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