日本植物病理学会報
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植物ウイルスの感染と増殖に関する研究
VII. CMV感染タバコ葉における葉緑素の分解
加藤 盛三沢 正生
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1974 年 40 巻 1 号 p. 14-21

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抄録

CMVによるモザイク病徴形成に関して葉緑素の分解面から検討した。感染葉では病状の進展に伴い葉緑素含量が急速に減少する。クロロフィラーゼ活性もまた減少傾向を示し,罹病による本酵素の活性化は認められない。また,モザイク葉内にはクロロフィラーゼによる葉緑素の分解産物であるクロロフィリドやそれからMgの離脱したフェオフォバイドは殆んど検出されないが,フェオフィチンが高濃度に検出されるのが極めて特徴的であった。このフェオフィチンは葉緑素の酵素的な分解によっては決して生成されない。従ってモザイク葉でみられたフェオフィチンの異常増加は感染細胞内の環境変化により非酵素的に形成されたものと考えられる。また,モザイク部や黄変部ではカロチノイド,特に黄色色素のキサントフィルが著しく増加しているのも特徴的であった。以上からCMV-タバコ系での葉緑素の分解はクロロフィラーゼによる酵素的分解とは思われず,非酵素的な葉緑素からのMgの離脱がその主因と思われる。またこのようなMgの離脱には先づ葉緑体中の蛋白分解が先行し,葉緑素・蛋白の結合の切れることが必要である。葉緑体蛋白の大部分を占めるフラクションI蛋白を例として調べた結果,フラクションI蛋白は葉緑素の分解と平行して急速に減少し,両者の間に極めて密接な関係のあることが認められた。しかし,このフラクションI蛋白の減少は蛋白分解酵素の活性化による直接的な分解というより,その合成機構の病的な抑制によると考えられるものであった。

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