抄録
1. トマト潰瘍病菌C. michiganenseをトマトの植物体各部に接種し,種子感染の状況を検討したところ,花噴霧および小花柄先端部針接種により高率に種子感染が起った。
2. 花接種による種子の感染菌量および種子感染率は,採集した果実によって異なり,上位花房接種区の果実から採った種子に比較的高い傾向がみられた。
3. 花単独接種よりも,花と小花柄先端部重複接種した場合,種子一粒当りの菌量および種子感染率は均一であった。
4. 種子内部感染について,表面殺菌後,菌を分離する方法で検討したところ,表面殺菌の方法によって大きな差が認あられたが,花および花と小花柄先端部重複接種によって得られた種子は明らかに内部感染が起きていることを示した。
5. 花接種による種子感染は,病原細菌ががくおよびがく跡から果実の維管束を通して種子に侵入したものと考えられた。そして,一般栽培圃場で本病が激しく発病した場合,同様な経路をたどって種子感染が起きることも示唆された。
6. 花と小花柄先端部重複接種により得られた保菌種子は,種子消毒法の開発などに役立つものと考えられた。