抄録
ナシ黒斑病菌の分泌する宿主特異的毒素(AK-毒素)は,感受性ナシ(二十世紀品種)のK+透過機能に障害を引き起すが,このAK-毒素作用に対する各種カチオンの効果について検討した。感受性ナシ組織では,AK-毒素処理後,直ちにK+の急激な漏出を生じたが,Na+, Mg2+, Ca2+などの漏出は,無処理ナシ組織からの漏出よりもむしろ減少する傾向にあった。一方,AK-毒素によるK+異常漏出は,ナシ組織にNa+, Mg2+, Ca2+などのカチオンを添加することによって,さらに著しく促進された。この促進効果は,添加カチオンの除去によって容易に消失した。Na+とMg2+による促進効果は,処理濃度の上昇(0.01-10mM)とともに増大したが,Ca2+の効果は,5mM以上の濃度で急激に減少した。以上の結果から,AK-毒素による宿主細胞膜のK+透過機能障害には,宿主組織に存在する数種のカチオンが関与しており,それはAK-毒素効果に対して促進的に働いているものと考えられる。