日本植物病理学会報
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Xanthomonas campestris pv. citriの産生するバクテリオシン様物質の精製と若干の性質
松尾 憲総松山 宣明脇本 哲
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1981 年 47 巻 4 号 p. 480-487

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抄録
X. campestris pv. citriはクロロホルムで処理することによって抗菌物質を産生する。この抗菌物質は指示菌(X. campestris pv. campestris X1-1-1)の平板上に明瞭な阻止帯を作るが,溶菌斑を形成しないのでテンペレートファージとは認められない。この物質は60,000×g, 60分間の遠心によって沈殿しないが, 75%アセトンで約50%, 60%飽和硫安でほぼ完全に沈殿し,透析膜を通過せず, 60C, 30分間の熱処理で完全に失活する。この抗菌物質含有原液をDEAEイオン交換セルロースカラムで処理したのち,さらに,ウルトロゲルカラムで分画すると,各分画の活性と280nmにおける紫外線吸収はほぼ完全に一致した。また,そのピーク分画の紫外線吸収は280nmで極大, 250nmで極小値を示すたん白質特有のスペクトラムを示した。この分画をディスク電気泳動にかけると,クーマジープルーで染色される2~3本のバンドが検出された。これらのうち,活性部分に相当するゲルを切り取り,再び電気泳動したところ,一本のバンドとなり,その部位に活性も認められた。SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果から,この物質の分子量は約30万と計算された。この物質は培地中で細菌を凝集または崩壊することにより,増殖を遅延させる。これらの結果から,この抗菌物質は一種のバクテリオシンと考えられる。この抗菌物質で処理したX. campestris pv. campestris X1-1-1を電子顕微鏡で観察すると,崩壊し細胞内容物が漏出したような細胞が多数観察された。
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