日本植物病理学会報
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親和性および不親和性組合せでのイネいもち病菌感染葉の電顕観察
I 侵入菌糸の観察
古賀 博則小林 尚志堀野 修
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1982 年 48 巻 3 号 p. 281-289

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抄録
本論文では,接種5日後のイネいもち病菌接種葉における侵入菌糸および被侵入宿主細胞の微細構造を親和性と不親和性組合せとで比較検討した。
親和性組合せの急性型病斑部では,宿主の表皮細胞,柔細胞および導管に菌糸が多数侵入しており,菌糸内には脂肪顆粒(平均直径0.75μm)に富み,正常な細胞小器官が認められ,細胞質基質が密に詰まっていた。また柔細胞部では,原形質膜および種々の細胞小器官は崩壊,消失しており,細胞壁と崩壊した葉緑体だけが観察された。不親和性組合せでは,侵入菌糸はi)表皮細胞,ii)壊死部柔細胞およびiii)呼吸腔に観察された。i)表皮細胞では,侵入菌糸は内部が顆粒化を起こして死滅しており,被侵入細胞も明らかに壊死していた。ii)壊死部柔細胞に観察された侵入菌糸の多くは,不規則に変形し,菌糸内には膨潤したミトコンドリアが高頻度で認められ,しばしば細胞内容物が顆粒化を起こし死滅していた。さらに,この部位に観察された菌糸は親和性組合せの急性型病斑部に観察された菌糸と比較して,脂肪粒に乏しく,液胞の著しい発達が特徴的であった。一方,壊死部柔細胞には変性した細胞壁の他に,崩壊した葉緑体のラメラと種々の大きさの高電子密度顆粒(直径0.05∼0.20μm)の集合体が観察された。iii)呼吸腔に観察された侵入菌糸は,細胞質基質が密に詰まっており,壊死部柔細胞に観察された菌糸よりも活力があるように見うけられた。
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