日本植物病理学会報
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ハウス密閉処理による太陽熱土壌消毒法について
V. イチゴ萎黄病防除に対する適用
小玉 孝司福井 俊男
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1982 年 48 巻 5 号 p. 570-577

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抄録
夏期のハウス密閉,地表面ビニルまたはポリエチレンフィルム被覆および注水処理などの複合処理による土壌消毒法の実用化の実験を行い,次の結果を得た。
1. イチゴ萎黄病菌(F. oxysporum f. sp. fragariae)汚染土壌に可溶性でんぷんを添加してたん水下におくと,土壌中のF. oxysporum菌は40C前後の温度域においても処理後8∼14日目には検出されない。
2. 本病病原菌の有効死滅温度域は約40C以上とみられ,この温度域の恒温または変温処理による土壌消毒に必要な積算時間数は192∼336時間(8∼14日間)であった。
3. 7∼8月のハウス密閉処理によって有効死滅温度域に達するのは,高日射年で処理開始3日目,低日射年で5日目であった。また,死滅に必要な積算時間数を得るためには,高日射年で12∼17日間を要し,低日射年では20日間以上を要した。
4. ハウス内の地表下20cmにおいて40C以上の地温を得るための気象条件は,全天日射量,気温,地温などが強く影響し,単年よりも複数年,当日値よりも3日間などの移動平均値との相関が高い。最も相関が高く利用しやすいのは最高気温の3日移動平均であり,Y=2.37X-33.27, r=0.889**の関係式が得られた。この数値はハウス規模など保温性の差によって若干の補正を要すると考えられた。
5. 圃場における本病病原菌の菌密度はハウス密閉処理により急激に低下し,処理9か月後においてわずかな増加の傾向を示した。2か年にわたるイチゴ圃場の調査から,処理区は全く発病を認めず,生育,収量ともに高まり,高度汚染条件下での実用効果が実証された。
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