日本植物病理学会報
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螢光抗体法による植物ウイルスの増殖・分布の研究 IV
キュウリモザイクウイルスのタバコにおける全身感染過程の追跡
細川 大二郎森 寛一
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1983 年 49 巻 2 号 p. 166-172

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抄録

キュウリモザイクウイルス(CMV)をタバコの中位葉に接種し,全身への感染がおこる経過を螢光抗体法を用いて組織・細胞学的な面から追跡した。遠隔のいずれの部位においても,ウイルス抗原は最初篩部に認められ,その後そこから周囲の組織へ拡がり,全身感染のおこる状態が観察された。ウイルスが遠隔部へ移行・増殖し始めた時期には,ウイルス抗原が篩部にそって,300μmから1cmあるいはそれ以上の間隔をおいて断続的に認められた。この結果は,ウイルスが葉肉組織など通常の柔組織を拡がる場合には,ウイルス抗原の認められない細胞が中間に生じることはなかったので,ウイルスが遠隔部へ移行する際には,篩部柔細胞ではなく篩管内を,柔細胞の場合とは異なる様式で移行していることを示していると思われた。遠隔部でウイルス抗原が検出され始める時期は,接種葉より上位の茎と葉で早く,下位の茎,葉および根では遅かった。上位の葉では葉脈透化およびlaminaの退緑病徴が,組織内のウイルスの拡がりにともなって現れた。いずれの部位でもウイルス抗原は組織内全体に拡がったのち,日数が経過すると減少した。

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