日本植物病理学会報
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ペチュニアの花器官および種子内におけるタバコモザイクウイルスの増殖・分布の電子顕微鏡観察
細川 大二郎森 寛一
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1983 年 49 巻 2 号 p. 173-183

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抄録

ペチュニアの花芽,花器官および種子内におけるTMVの増殖・分布を電顕により検討し,次の結果を得た。
1. 栄養芽生長点が花芽生長点に分化してもその近傍組織にはウイルス粒子は認められなかった。
2. 雄蕋では,花糸と葯が分化し,葯内で花粉母細胞から4分子を経て花粉が形成される時期頃までは,花糸および葯内ともにウイルス粒子は認められなかった。これ以後にウイルスが葯壁の細胞に集積したが,花粉のう内の花粉には開花期になってもウイルス粒子は認められなかった。
3. 雌蕋(心皮)では,子房壁,胎座,花柱,柱頭が分化すると,間もなくウイルスの感染がこれらの器官に認められたが,胎座から胚珠へは,ウイルスの拡がりがおそく,胚珠には,胚のう母細胞から胚のうが形成される間には,ウイルス粒子は認められなかった。胚珠では開花4日後になってから珠皮の細胞にウイルスが認められた。しかし,受精後,胚と胚乳には種子が成熟してもウィルス粒子は認められなかった。
4. 胚珠から種子が形成される過程で珠皮細胞内のウイルスは,原形質の消化・吸収に伴って,その粒子の形状が変化すると同時に活性が低下し,成熟した種子には,ウイルス活性はまったく見出されなかった。
5. 開花時には柱頭,花柱の誘導組織の細胞にはウイルスが認められたが,これらの組織の細胞間隙を伸長した花粉管内にはウイルス粒子は認められなかった。
6. 以上の結果から,TMVがペチュニアで種子伝染しない原因について考察した。

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