日本植物病理学会報
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ダイコン畑から分離したRhizoctonia solani Kühnの新しい菌糸融合群(第7群)
本間 善久山下 洋子石井 正義
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1983 年 49 巻 2 号 p. 184-190

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抄録

ダイコン根腐病に関与するR. solaniを分離し類別する間に,既知の菌群と異なる菌群が発見された。完全時代の形態から本菌群の同定を試み,生育温度,菌糸幅,細胞核数,チアミン要求性,病原性などの諸性質を調べた。
1. 本菌群の菌株は,香川県善通寺市の秋ダイコン畑土壌およびダイコン立枯苗から分離された他,奈良県,滋賀県,徳島県の土壌からも得られた。
2. 菌そうは,茶褐色∼褐色を呈し,綿毛状の気中菌糸が多く,径1mm位の菌糸塊を生じた。菌糸塊は後に黒褐色の固い菌核になった。PDA上,15∼40Cで生育し,生育適温は28∼35C,生育速度は25.5∼27.0mm/24hrであった。チアミン要求性はなかった。
3. 主軸菌糸幅は,最小6.4μm,最大9.8μmで6菌株の平均値は7.80∼8.27μmであった。菌糸細胞の核数は,最少3,最多11,4菌株の平均値は5.4∼6.0個であった。
4. ダイコン,キュウリ,インゲン,トマト,オオムギおよびイネに対する病原性はほとんど認められなかった。
5. 完全時代は,土壌表面に容易に形成した。担子柄は短棍棒形∼円筒形で,11.0∼27.5×6.5∼11.0μmであった。小柄は角状で,担子柄当たり(1∼)4本生じ,5.0∼18.0μmであった。小柄の先端に倒卵形∼楕円形の担子胞子を形成した。担子胞子は6.5∼13.0×4.0∼8.5μmであり,小嘴を有し,発芽して二次胞子を作ることがあった。
6. 本菌群は,完全時代の形態からThanatephorus cucumeris (Frank) Donkと同定し,R. solaniの新しい菌糸融合群第7群(AG-7)とすることを提案する。

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