1983 年 49 巻 2 号 p. 206-213
付傷,化学薬品処理,またはタバコモザイクウイルス(TMV)接種をしたNicotiana glutinosa植物葉のリボヌクレアーゼの挙動について研究した。本酵素の活性は付傷により増加し16時間後にMaxに達した。TMVも酵素活性の増加をひき起こしたが,その効果は接種原の濃度に依存的であった。本酵素は,ポリアクリルアミドゲル電気泳動により,MおよびFの2アイソザイムに分離した。特に,Mは付傷により,FはTMVの接種によって,それぞれ,活性の増加が起こった。葉面の化学薬品処理において,ベントナイトおよびデキストランサルフェートはMの活性を阻害し,一方,イーストRNAおよびエオシンYはFの活性を増加させた。しかし,これらの薬品によりTMVの感染性は阻害された。TMVを接種した本植物を35Cにおいて高温処理をしたとき(このとき,全身感染が起こった),Fの活性は検出されず,新たに別のアイソザイムの出現が認められた。しかし,接種後2日間の高温処理をした植物を21Cにおいて低温処理をしたとき(このとき,局部病斑の形成が起こった),前述の新らしいアイソザイムの活性は認められなくなり,再び,Fアイソザイムの活性が現われるようになった。以上の実験結果より,TMVの感染におけるリボヌクレアーゼの役割について考察した。