日本植物病理学会報
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カブモザイクウイルスの保存に及ぼす各種添加物の影響
福本 文良栃原 比呂志
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1983 年 49 巻 2 号 p. 220-227

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抄録

カブモザイクウイルスについて簡便で長期間安定な保存方法を確立するため,各種添加物を加えて非凍結,凍結および凍結乾燥保存を行い以下の結果を得た。
1. 純化ウイルスに等量(v/v)のグリセリンを加えて混合し-20Cに保存する非凍結保存で高い病原性が長時間維持された。
2. コカブ病葉に50mM P.B. pH 7.0を加え,磨砕した粗汁液と10mM P.B. pH 7.0に溶解した純化ウイルスでは凍結による病原性の低下は認められないが,-20Cで保存すると病原性はしだいに低下した。しかし,グリセリン,しょ糖,ペプトン等を添加すると高い病原性を長期間維持した。-70Cでの凍結保存は更に良好で,添加物を加えなくても長期間病原性を維持していた。
3. コカブ病葉の粗汁液を凍結乾燥した場合顕著な病原性の低下は認められないが,純化ウイルスでは病原性は大幅に低下し,その原因としてウイルスの凝集が示唆された。純化ウイルス液にペプトン,しょ糖,乳糖などの添加物を加えることにより凝集が防止された。粗汁液の凍結乾燥標品を25Cに保存した場合無添加では急速に病原性が低下したが,グリシンとペプトン添加区では14か月後でも高い病原性を維持した。65Cで保存した場合は粗汁液および純化ウイルスのいずれもペプトン添加区で保護効果が顕著に認められた。また,グリシン添加区では粗汁液で保護効果が顕著であったのに対し,純化ウイルスではほとんど効果が認められなかった。凍結乾燥標品は添加物の有無にかかわらず4C保存でかなり安定であり,-20C以下で保存すると長期間病原性にほとんど変化が認められなかった。

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