日本植物病理学会報
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Alternaria alternata群病原菌における宿主特異的毒素生成の制御
(1). 高温度ストレスによる胞子発芽時の毒素生成の阻害
柘植 尚志西村 正暘
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1984 年 50 巻 2 号 p. 189-196

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抄録

ナシ黒斑病菌の病原性発現に及ぼす高温度ストレスの効果について検討した。本菌の分生胞子を50Cの温湯中に10秒間浸漬すると,二十世紀ナシ葉に対する病原性発現が著しく阻害された。その際,胞子の発芽,発芽管の伸長および付着器の形成などは殆んど影響を受けなかった。しかし,胞子発芽時の宿主特異的毒素(AK-毒素)の生成・放出は著しく抑制されることが観察された。なお,温湯処理した分生胞子は,処理後4C下に24時間放置することにより,AK-毒素生成能力を回復し,その結果,病原性発現能力も回復した。また,風乾した分生胞子を夏季(1983年8月3日∼8月16日)に野外に放置した結果,胞子の発芽能力は殆んど影響を受けることなく,胞子の発芽時のAK-毒素生成能力および病原性が著しく低下することが見出された。以上の結果から,ナシ黒斑病菌の分生胞子に対する高温度ストレスは,胞子発芽時のAK-毒素生成に対して阻害効果を示し,その結果,病原性の低下を引き起こすものと考えられ,本菌の病原性発現における胞子発芽時のAK-毒素の重要性が示唆された。

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