日本植物病理学会報
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土壌から分離されたRhizoctonia solaniの異常株の諸性質
百町 満朗宇井 格生
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1984 年 50 巻 2 号 p. 255-262

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抄録
テンサイほ場の土壌からRhizoctonia solaniの生育異常株の分離を試みるとともにその諸性質を調べた。
1. テンサイ畑に人工的に菌を接種し,著しく発病した株の周辺土壌から,通常のR. solani第2群第2型の菌株と比較して初期生育の極めて遅い株(生育異常株)が,次年の春に高率に分離された。
2. 異常株は,テンサイを8年間連作して根腐病が衰退したほ場の根腐病発病株の周辺土壌からも収穫期(10月)に分離された。
3. 異常株は分離株により異なるが,菌糸が歪む,原形質が消失する,菌そう先端部の菌糸密度が薄い,菌核の形成が悪いなどの点で正常株と異なる。
4. 生育異常株の菌そうの各部分から移植した菌糸の生長は,菌そうの基部に近いところ程良好であり,先端部付近では著しく劣る。
5. 異常株をstreptomycin, ethydiumbromide, chloramphenicol, cycloheximideを加えた培地に培養しても,正常株には回復しない。
6. 菌糸融合により異常因子の正常株への移行は認められない。また,異常株にdsRNAは存在しなかった。
7. 異常株の病原性は,正常株に比べ著しく劣る。
8. 異常株はいずれの菌糸融合群についても継代培養した保存菌株のなかに認められた。
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