抄録
日本の施設栽培野菜の主生産地から分離したプロシミドンに耐性な灰色かび病菌について,その薬剤感受性を調べたところ,分離頻度分布は一峰性を示し,その感受性はED50値で約1/10に低下していた。これら耐性菌の培地上での性質は感受性菌と類似していたが,感受性菌の生育が阻害されない程度の高温で,耐性菌は生育を阻害された。一方,耐性菌の病原力について,キュウリの小苗を使って感受性菌と比較したが,両者に差が認められなかった。しかし,感受性菌の胞子を耐性菌の胞子に混合してトマト果実に接種し,病斑上に形成された分生胞子の薬剤感受性を調べたところ,耐性菌率は急減した。また,1981年度作末期に耐性菌が慢延していた高知県下の一般農家ハウスで,1982年度作の初期に発生した灰色かび病菌のプロシミドン感受性を調査したところ,耐性菌はほとんど認められなかった。キュウリ葉での耐性菌に対するプロシミドンの防除効果は低下していた。しかし,耐性菌に感受性菌を混合して接種し,発病が認められた後に,プロシミドンを治療的に散布処理すると,感受性菌に対するのと同程度の防除効果が認められた。