1984 年 50 巻 5 号 p. 600-609
イチゴ黒斑病(Alternaria black spot of strawberry)の病原Alternariaは形態学的には集合種A. alternata (Fries) Keisslerの範疇に入るが,その病原性はイチゴでは盛岡16号品種のみに認められた。したがって,病原菌はA. alternataのイチゴpathotypeとして位置付けるのが妥当であると考えた。なお,本菌はイチゴ以外に,日本ナシのうち,二十世紀など特定のナシ品種に対し病原性を示した。本菌の病原性保有菌株は培養液中に少なくとも3種類の宿主特異的毒素(AF-毒素I, IIおよびIIIと命名)を生成することが見出された。そのうち毒素IとIIが主成分であった。AF-毒素Iは感受性イチゴと二十世紀ナシ葉に対して,黒色葉脈壊死の形成とK+イオンの異常漏出を誘起した。一方,AF-毒素IIは感受性イチゴ葉からK+イオンの異常漏出は誘起したが,壊死斑は形成しなかった。なお,AF-毒素IIは二十世紀ナシ葉に対して壊死斑形成とK+イオンの異常漏出の両方を誘起した。