抄録
電気生理学的方法を用いて, AF毒素を処理したイチゴおよびナシ葉柄細胞の膜機能の変化を調査した。また,感受性イチゴへの毒素Iの作用に対する毒素IIの保護効果について再検討した。AF毒素Iは3.2×10-6Mという低濃度で感受性イチゴの光依存性および非依存性の膜電位成分を急激に減少させた。AF毒素IIは感受性イチゴに何らの作用もおよぼさなかった。なお,抵抗性イチゴはいずれの毒素にも反応しなかった。次に,イチゴおよびナシ葉柄を用いて道管灌流法によって道管-生細胞間の界面膜電位差を測定した。毒素Iはイチゴとナシの,毒素IIはナシの,それぞれ感受性品種のみに起電性イオンポンプ活性の阻害をひきおこし,呼吸依存性の膜電位差が急激に減少した。また,両毒素とも抵抗性品種には何ら作用をおよぼさなかった。感受性イチゴにあらかじめ毒素IIを24時間処理してから毒素Iを灌流すると,初期において呼吸依存性の膜電位差の急激な減少はみられなかった。以上の結果から, AF毒素の初期作用は感受性植物の原形質膜の機能喪失であり,毒素Hはイチゴに対して毒素Iによる原形質膜への初期作用を著しく遅延させることがわかった。