日本植物病理学会報
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わが国におけるPotato mop top virusの発生とその2, 3の性質
井本 征史岩木 満朗栃原 比呂志中村 啓二花田 薫
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1986 年 52 巻 5 号 p. 752-757

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抄録

広島県下の秋作ジャガイモ(農林1号)に生じた塊茎の褐色輪紋症状はウイルスに起因することが証明され,その病原ウイルスは寄主範囲,病徴,土壌伝染性,粒子の形態,粗汁液中の安定性,血清学的類縁関係などから, potato mop top virus (PMTV)と同定された。本病をジャガイモ塊茎褐色輪紋病と呼ぶことにした。ジャガイモ(農林1号)では葉脈の両側に黄化あるいはえそが見られ,細脈にえそを生じたが,通常の栽培条件下では明瞭でなかった。塊茎の褐色輪紋症状は収穫後18 C 15日間と9 C 10日間の変温処理を2回行ったところ発現した。寄主範囲は3科(アカザ,ッルナ,ナス科)の13種に限られ, C. amaranticolorN. debneyiに特徴的な病徴を生じた。発病地土壌に健全ジャガイモ(農林1号)とN. debneyiを植付けたところ発病し,また粉状そうか病罹病ジャガイモにPMTVを接種し,その土壌にN. debneyiを植付けたところ発病したことにより,土壌伝染することが明らかとなった。不活化温度は65~70C (10分),希釈限度は100~500倍,保存限度は20Cで5~7日であった。粒子の形態はダイレクトネガティブ染色法で幅約20nmの棒状であり,長さは140~150と270~300nmにピークが見られた。部分純化標品を家兎に注射して得られた抗血清は免疫電顕法で1,024倍の力価を示した。本ウイルスはイギリスに発生しているPMTVの抗血清とも同様によく反応した。

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