抄録
カンキツにせ黄斑病を起こす射出胞子形成酵母の分類学的帰属を明らかにした。本菌はカロチノイドを有し,腎臓形および卵形射出胞子を形成することからSporobolomyces属菌と確定した。inositolを利用せず,硝酸カリウムを資化し,偽菌糸及び真菌糸を形成せず,可溶性デンプンを利用すること,その他の性質もS. roseusの原記載とほぼ一致することからS. roseus Kluyver et van Nielと同定した。病原菌はカンキツ葉表面で増殖し,その-部は気孔から組織内に侵入,細胞間隙で増殖したが,高電子密度の物質によって細胞間隙に封じ込められ,あるいは宿主細胞の細胞壁に固定され,やがて壊死した。菌体に接する宿主細胞ではplasmalemmaとtonoplastが崩壊し,葉緑体が変性,液胞は拡大したが,細胞壊死は見られなかった。